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丹後の日記

コンペイヘチマゴケ Pohlia camptotrachela編集する
2008年11月12日19:42全体に公開
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昨年秋に採集して以来苦痛が続いていた。以下の日記は本気でそう思って書いたわけではない。
 ホソヘチマゴケ P. leucostoma :
 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=592142477&owner_id=2651499
 コモチヘチマゴケ P. bulbifera :
 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=646592377&owner_id=2651499

手詰まり状態であったのだが次の論文が出て,あっと言う間に答が分かってしまった。
『秋山弘之・山口富美夫: 無性芽を有するヘチマゴケ属(ハリガネゴケ科,蘚類)の研究
1. 日本産キヘチマゴケとその近縁種の再検討』 (蘚苔類研究 第9巻 第9号 2008年11月)

この論文は,「日本で今までキヘチマゴケ P. camptotrachela とされていた種は,キヘチマゴケ P. annotina と本種の2種から成り立っている」ことを明らかにしたものである。つまり,キヘチマゴケの学名の訂正とコンペイヘチマゴケの日本産を報告。この2つは無性芽以外の違いはほとんどないということだが,本種の無性芽は特異で他のどの種にも似ていない。

(1) 各葉腋に3-10個以上つき,黄色〜黄褐色。生時においてもルーペで黒っぽい粒に見える。
(2) やや長い倒卵形で小さく(70-120μ),尖った方の先端で茎についている。
(3) すべて同一形態(色々の形が混じらない)で,長いものやねじれたもの(おしぼり状)はない。
(4) 無性芽を構成する細胞は,角の丸い方形〜六角形で細長くなることはない。
(5) 葉原基は痕跡的でほとんど見えない。稀にあったとしてもコモチヘチマゴケ P. bulbifera のように内曲したりはしない。

今になって考えるとこんな種は図鑑に載っていない。本に書いてないものは同定できるわけがない。この論考がなければいつまでたっても「???」のままだったことだろう。和名(新称)の‘コンペイ’の意味が知りたい。

ミネハリガネゴケ P. ludwigii だけがちょっと気になったが,・葉が卵状披針形ではなく先が鋭く尖ること,・葉身細胞の幅が13μ未満で狭いこと,及び・中肋がほぼ葉頂に達する点で異なる。

あえて気にかかる点があるとすれば,・本種の上記論文での引用標本が6点しかなくいずれも標高が高いこと(700-2000m),・スライドグラス上で大量の無性芽の中に2,3個おしぼり状のがあったこと。ただ,同定はこれでよいという気持ちは変わらない。

【追記】
「おしぼり状の無性芽」の犯人は,わずかに混生していたキヘチマゴケ P. annotina らしきものだった。


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 柿吊つて 去りゆく月日 来る月日        丸山太朗子

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