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丹後の日記

イチョウウキゴケ Ricciocarpos natans編集する
2008年10月08日20:47全体に公開
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昔(20年前)は,水田の湧水のあるような場所によく浮かんでいた。「あれがそうだったに違いない」と気にかかっていたが,コケを始めて4年目にやっと見付かった。確かに絶滅危惧かも知れない。そして「減ったのは農薬のせい」とよく言われるが,そのことをどうやって確かめたのだろうか。少なくとも隠岐のものについては,埋立・耕作放棄・圃場整備などによる乾燥化が原因だと思う。環境がなくなれば育ちようがない。農薬は昔もたっぷり使っていたし,そのために水生昆虫が壊滅状態になったが,本種が消えたのはそれからずっと後での話である。シダのアカウキクサ類がすっかり消えたのも同じ理由であろう。

この種の初めての同定が,「陸上型」というのは不幸なことだ。「コハタケゴケではないし,カンハタケゴケにしては時期が早いような・・・,これこそ未採集のハタケゴケ Riccia glauca かも知れない」などと考えて持ち帰った。ウキゴケ属の種は外観が互いに似ていて妙に難しい。ここを抜け出すのに随分時間がかかった。ゼニゴケ亜綱はさぼっていて,「気室・気室孔」の意味をよく知らなかったためである。かつての記憶や図鑑類の写真(水上型)とは,見かけが違いすぎたこともある。

葉状体の表皮部分を剥ぎ取って上から見たら,蜂の巣のような六角形の構造が広がっていた。そして,それぞれの中心に「小さな暗い穴」が1つづつある(そそっかしいと見落とす)。これが「気室孔」というものであろう。「気孔」とは違って小型の細胞が穴の周囲を円く囲んでいる。他に,「長いリボン状の腹鱗片が多く付いていて,その縁に微細な歯がまばらに出る」のもよい特徴である。歯の先端の細胞(刺状)が,薄紫を帯びる傾向があるのも面白い。なお,属の検索表にある「油体細胞」はどんなものか分からなかった。

山奥の小さな水田を真剣に捜せば,まだ残っているかも知れない。あちこちで「陸上型」に気付かないでいる可能性も大きい。


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 ジンジャーの 白極まりて 香を高む           平岡喜美子
 ジンジャーに 雨の幽(くら)さの 日もすがら       芝 由紀
 忘れ得ぬ ジンジャの径(こみち) たづねけり      加藤きく

コメント

  • プロジェクトK

    プロジェクトK2008年10月09日 01:18 削除
    イチョウウキゴケ、農薬のせいで・・・というのは状況証拠でしょうね。
    最近では「無農薬・減農薬」の旗が大きく振られているのがよいのか、都市部でも見ることがあります。
    準絶滅危惧に落ちましたね。
    まぁ、平たく言うところの「健全」な田んぼが絶滅危惧なのかもしれません。
  • 丹後

    丹後2008年10月09日 19:48 削除
    》プロジェクトK さん

    「減農薬」大賛成です。「無農薬」は経験から言うと無理かもしれません(少なくとも主流としては)。農産物の価格が数倍に跳ね上がりそうな・・・。

    湿地についても,全部無くすから困るので一部を残すことを考えるべきだと思っています。保存用に行政が買い上げればいいです。安いものです。言わば国立公園の市町村版です。

    自然保護の話というと,感情的になって極論で対立仕勝ちですが,多分中間のどこかに正解があります。

丹後

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