[mixi] タカネツノゴケ　Anthoceros fusiformis

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丹後の日記

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タカネツノゴケ　Anthoceros fusiformis編集する: 2008年09月28日15:42; 5 view

今年になって珍しそうなコケに色々出会って来たが，極め付きはこれかも知れない。分布は北アメリカの太平洋岸と，日本列島の日本海側に限られるという。J. Hasegawa (1984): Taxonomical studies on Asian Anthocerotae Ⅳ に（日本産を初めて報告），北海道（利尻島，Porofunbetsu）・山形（月山，朝日岳）・新潟（黒沢岳）・長野（白馬岳）・福井（経ヶ岳）・鳥取（大山）という産地が並んでいる。和名の通り北海道以外はすべて1,000mを越える高山である。大山は天気が好いと見える距離でせめてもの救いだが，採集地点810ｍ alt. と隠岐の150m alt. は別世界ではある。

葉状体の縁に不規則なギザギザができるという非常に変わった性質がある。紙を引きちぎったあとによく似ていて，こんな感じは全く記憶にない。現地ではスジゴケ科しか思い浮かばず，「他の種の奇形」あるいは「コケではないかも知れない」という気持ちも強かった。ツノゴケ類はある程度分かったつもりでいたが（6種採集）全く気付かなかった。しかし，細胞腔を埋め尽くすような巨大な葉緑体（1個ずつ）と切断面の構造はツノゴケ科以外のものではあり得ない。

ここまで書いていたのだが，大間違いに気付いた。正解はアナナシツノゴケ Megaceros flagellaris である。A. fusiformis とした根拠は，(1) 葉縁の特異な鋸歯，(2) ロゼットにならず帯状に伸びる葉状体，(3) 葉緑体は各細胞に1個ずつ，の3点であった。一方疑問点としては，(a) 上記の特殊な分布，(b) 基物が水に濡れている岩，(c) 葉状体内部に細胞間隙（空洞）がない，があった。再度調べてみて，(3)は「場所にもよるが2-3個であることが多い」，（c）は「どこを切っても例外がない」，ということが分かった。よって，Anthoceros ではあり得ない。

J. Hasegawa (1983): Asian species of Megaceros によると，M. flagellaris には非常に変化があり，葉縁がギザギザになる（laciniately fringed）変異型も現れるそうである（初めて知った！）。胞子体によるチェックなしだが，既知の M. flagellaris と同一種だと断定できる。

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