「青色の油体」のことは知っていたが,本当にあった。青というよりは藍(ややくすんだ濃紺)だが,色の濃淡には多少の変異があるらしい。実体顕微鏡でも(×40),透明な細胞の中央部に藍色の点が浮かんで見えて綺麗だ。
典型的なブドウ房状で本種に間違いはないのだが,青い油体は他にもあるんだろうか?が気になった。図鑑を読むと同属のミドリホラゴケモドキ C. granulata もそうだ。しかしそれ以外のことは分からなかった。「著しい特徴」があっても,その種に限るのか,あるいは他に何と何があるのか,そういうことがはっきり書いてある文献はまずない。
暗い色で光沢を感じたので取りあえず採集したが,トサホラゴケモドキ C. tosana だろうと軽く考え,忘れてしまっていた。なんとも情けない。なお,標本にしてしまうと両者の区別が難しそうだが,ベルカの有無が異なる。腹葉の形(切れ込み)も多少違う。
山の頂上近く(alt. 600m)の急傾斜地,薄暗い自然林の中にあった(スギ腐木)。およそ人の入り込むような場所ではない。ここで,このコケを見た人は今までにいないし今後も現れないだろう,と妙なことを考えた。残念ではあるが多分そうであろう。
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無花果を なまあたたかく 食べにけり 津川絵理子
無花果の 味のひかえめ なりしかな 遠藤和良
無花果喰ふ 右手左手 ねばつきて 岸 貞男