前に「センボンゴケ科 ?」として放置していたもの。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=793587246&owner_id=2651499
その後”K. Saito, 1975: A Monograph of Japanese Pottiaceae”を入手,捜しまわってこれしかないという結論になった。
変化の多い鵺(ぬえ)のような種で,文献によって書いてあることが少しずつ違う(互いに矛盾)。葉形・葉身細胞の形・パピラの多寡など,同一個体内でも変化があるという。「MOSS FLORA」には図が9例も出ている。どれとも一致しなかったのだが,このような変化の大きさが一つの特徴と思うしかない。多形でよく騙されるものにヤノネゴケ Bryhnia novae-angliae があるが,外観だけの問題なので(ミクロ的には均質)まだましだ。
平凡社の図鑑の説明では「茎の表皮細胞は薄壁で透明」となっているが,上記の論文では「thick-walled」となっている。そして,"Flora of North America" の図版には両方の図が出ていた。生育状態によっても違うものらしい。
http://www.efloras.org/object_page.aspx?object_id=85582&flora_id=1
決定的なのは,「茎の表面にパピラがある」ことで,こんな種は他にないように思った。今回のものは球状の低いパピラで,表面から見るとベルカと言った方がよい。表皮細胞が高く突出(マミラ)する場合もあるようだが,切断面でごく一部に確認できたに過ぎない。湿岩上に生えたものでは,表皮が平滑なこともあるそうである。
センボンゴケ科には,胞子体がないと同じように見えるものが多い。取りあえず野外では,「(1) 乾いても葉が円筒状に丸くならない。(2) 葉身が細く(幅0.2mm),漸尖して鋭く尖る。(3) 葉が非常にもろい。」を手掛かりにしたい。
顕微鏡下では,「球形の明るいパピラがぎっしり密着して並ぶ」様で一目で分かる。他の種のように葉面が暗く見えたり,細胞の境界が不明瞭ということはない。また,先が分かれたりC字状になったりせず,単独であるように見える(1細胞当たり4-8個)。そして,葉下部に近づくとパピラが楕円状に伸びてくる(縦方向に)。次第に低くなって薄れてくるが極めて印象的な眺めである。
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犬連れて 稲見に出れば 露の玉 鬼貫
虫のこゑ じいんじいんと 稲稔る 高澤良一
ひと駅の 列車通学 稲の秋 橋本風車
今日も独りで山を歩いていました。日差しがすっかり秋です。今に空が高くなって,いわし雲や絹雲が現れます。
鰯雲 日和いよいよ 定まりぬ 高濱虚子
鰯雲 地上はものの 音もなし 藤崎久を
鰯雲 小さな村を またぎけり 塙 告冬