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丹後の日記

オウムゴケ Hymenostylium recurvirostrum編集する
2008年09月06日21:12全体に公開
5 view
前に「センボンゴケ科 ?」として放置していたもの。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=793587246&owner_id=2651499
その後”K. Saito, 1975: A Monograph of Japanese Pottiaceae”を入手,捜しまわってこれしかないという結論になった。

変化の多い鵺(ぬえ)のような種で,文献によって書いてあることが少しずつ違う(互いに矛盾)。葉形・葉身細胞の形・パピラの多寡など,同一個体内でも変化があるという。「MOSS FLORA」には図が9例も出ている。どれとも一致しなかったのだが,このような変化の大きさが一つの特徴と思うしかない。多形でよく騙されるものにヤノネゴケ Bryhnia novae-angliae があるが,外観だけの問題なので(ミクロ的には均質)まだましだ。

平凡社の図鑑の説明では「茎の表皮細胞は薄壁で透明」となっているが,上記の論文では「thick-walled」となっている。そして,"Flora of North America" の図版には両方の図が出ていた。生育状態によっても違うものらしい。
http://www.efloras.org/object_page.aspx?object_id=85582&flora_id=1

決定的なのは,「茎の表面にパピラがある」ことで,こんな種は他にないように思った。今回のものは球状の低いパピラで,表面から見るとベルカと言った方がよい。表皮細胞が高く突出(マミラ)する場合もあるようだが,切断面でごく一部に確認できたに過ぎない。湿岩上に生えたものでは,表皮が平滑なこともあるそうである。

センボンゴケ科には,胞子体がないと同じように見えるものが多い。取りあえず野外では,「(1) 乾いても葉が円筒状に丸くならない。(2) 葉身が細く(幅0.2mm),漸尖して鋭く尖る。(3) 葉が非常にもろい。」を手掛かりにしたい。

顕微鏡下では,「球形の明るいパピラがぎっしり密着して並ぶ」様で一目で分かる。他の種のように葉面が暗く見えたり,細胞の境界が不明瞭ということはない。また,先が分かれたりC字状になったりせず,単独であるように見える(1細胞当たり4-8個)。そして,葉下部に近づくとパピラが楕円状に伸びてくる(縦方向に)。次第に低くなって薄れてくるが極めて印象的な眺めである。


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 犬連れて 稲見に出れば 露の玉         鬼貫
 虫のこゑ じいんじいんと 稲稔る       高澤良一
 ひと駅の 列車通学 稲の秋          橋本風車

コメント

  • hana

    hana2008年09月09日 00:12 削除
    こんばんは。コケの研究、難しいですがなんだか楽しいですね。 いつも、研究結果の後についている詩、とても素敵ですね。 季節の移り変わりが感じとれてしみじみします。 私は秋に移り変わる今がすごく好きですわーい(嬉しい顔)
  • 丹後

    丹後2008年09月09日 20:28 削除
    》 hana さん

    今日も独りで山を歩いていました。日差しがすっかり秋です。今に空が高くなって,いわし雲や絹雲が現れます。

     鰯雲 日和いよいよ 定まりぬ     高濱虚子
     鰯雲 地上はものの 音もなし     藤崎久を
     鰯雲 小さな村を またぎけり     塙 告冬
  • hana

    hana2008年09月10日 00:10 削除
    ふらっと山に行ける隠岐はうらやましいです。 今日は幼稚園から帰ってきた娘と一緒に隠岐旅行のビデオ鑑賞して、癒やされていました。娘も、よっぽど楽しかった様で、また船乗りたいだの、ホテルで、りさちゃんと遊びたいだの、サザエやウニとったね〜わーい(嬉しい顔)と話してました。鰯雲、そろそろ見れますね。

丹後

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