「検鏡すると葉状体の縁が単細胞になり透明になった翼が全面,時にはその一部にみられるのですぐにわかる。」(1972 T. Kodama)の通りでアッと驚いた。翼部の縁から 3列(以上)の細胞は単層で,葉緑体が少なく透明に近い。1番外側の細胞がはっきりと小さく,2列目 3列目と次第に大きくなるのもよい特徴。更に,縁の細胞は外へ突き出るようにふくらみ多少でこぼこした感じになる。
これでほぼ十分なのだが完全ではない。希産種ではあるがコテングサゴケ R. pusilla という種があって大きさ以外は非常によく似ている。小型の種で,検索表では「植物体の長さが 10mm以下か,以上か」で分かれる。他に最終分枝の幅や厚味にも差があるが,標本が中間的なものでどちらとも言えない。
Main axis(主軸?)の幅が 0.5-1.2mmあったのでこれを基準に使った。コテングサゴケの方は 0.25-0.45mmということである。両種には雌雄同株か異株かという決定的な違いがあるのだがこれは確認が難しそうである。雌器はついているが,雄器が見えないからといって雌雄異株だとは言えない。ただ,標本では雌器に 2型(♀と♂♀)があるような気がするのと,やや大きめで側糸(paraphysis)が確認できることも,本種と決める根拠にした。
スジゴケ属はやっと 3種めで標本もそれぞれ 1点ずつだけ。これで分かろうというのはちょっと虫がよすぎるだろう。生長の悪いクシノハスジゴケとしておいて,今後の観察で解決したい。しかし,特異な形態で目につきやすい仲間なのに出会った記憶がほとんどない。今回は以前に見て「わかりっこない」と放置していたのを,ピンポイントで捜しに行った(ツガゴケのある環境)。ヤブ蚊に刺され雨でずぶ濡れになった。
---------------------------------
暑気せめぐ 土むつとして 胡麻咲けり 飯田蛇笏
胡麻の花 雷後の暑さ もどりきぬ 五十崎古郷
胡麻の花 おのが日影に こぼれたる 寺島ただし