検索フォーム

丹後の日記

キテングサゴケ Riccardia flavovirens編集する
2008年07月21日18:24全体に公開
4 view
目で見ただけで Riccardia であることはすぐ分かるが,特徴らしい特徴もなく種の同定は難しいと言われている。おまけに 21+1種もある。今までに同定したのはナガサキテングサゴケ R. nagasakiensis 1種だけで何とも心もとない。そして,詳しい論文も持っていないので平凡社図鑑の検索表が唯一の頼りである。

A,B: 分枝や粘液毛ははっきりしないが,八重山列島固有種は除くことにする。
C: フチドリスジゴケ R. marginata var. pacifica ではない。・・・油体が 1個でブドウ房状でもない。
D: 葉状体の表面は平滑。・・・しかし,多少ベルカが見えるので,イボテングサゴケ R. tamariscina を完全否定はできない。
E: 葉状体表面の細胞壁は薄く,横断面でトリゴンはない。
F: 葉状体の翼部は狭く,単細胞層は 1-(2)細胞幅。
G: 葉状体腹面は凹面状ではない。
H: 表皮細胞は内部の細胞よりはっきり小さい。
I: 表皮細胞の長さで比較して 1/4以下ではない。
J: 表皮細胞が 1/2以上でもない。・・・ナミガタスジゴケ R. chamedryfolia は油体が 1-5個と多い。
K: 油体は大きくてやや粒の大きい微粒からなる。
L: 油体は,ほぼすべての表皮細胞にある。

ここまで書いた時点で,本種 R. flavovirens Furuki の原記載は何時かが気になった。実は 1991年に古木先生によるスジゴケ科の詳細なモノグラフが出ていて,しかも自分で持っていることが分かった!これは本当にありがたい。大いに元気が出て来た。つい先ほどまで,「水谷・服部:‘邦産テングサゴケの分類’(1957)しかないんだけど,買うしかないな」と思い込んでいた。

同定を イボテングサゴケ R. tamariscina に訂正する。上記の時点では正体不明だったこの種の形質が明らかになったので検鏡し直してみた。「表皮細胞の上にゴミがこびり付いたようなベルカ」を否定することができない。そしてこのことは本種を一意に特徴づけるという事実も知った。

本州では広島・山口の記録しかないようなので慎重に考えた方がよい。しかし,前記論文があるので今後いくらでも同定の精密化が可能になる。もう一度きちんと採集して信頼度 100%にしたい。


---------------------------------
 代々の 貧乏垣の 木槿哉           一茶
 白木槿 とびきり暑き 日とならむ     高澤良一
 底紅や 遠き日の空 けふの空      谷口摩耶


コメント

丹後

close
  • 絵文字

利用規約および個人情報保護ページに同意のうえ投稿してください。

日記を書く

友人の最新日記

<2008年07月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

日記の使用状況

0.8MB/2000.0MB