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丹後の日記

ヤマハリガネゴケ Bryum paradoxum編集する
2008年07月10日12:21全体に公開
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がんがん陽の当る湿った岩壁,ハマキゴケの中に点々と混生していた。一瞬ハリガネゴケ B. capillare?と思ったがすぐに否定した。葉先の尖り方が狭いし中肋の芒も短い。Bryum であること(Pohlia ではない)は直感であるが,(1) 葉身細胞が短くて(35-50*7-10μ)網目状に見える,(2) 中肋が強くて棒状にはっきり突出する,などがその理由になる。

胞子体なしであるが平凡社図鑑の検索表を使うことにした。
A. ツクシハリガネゴケ B. billardieri (既知種)ではない。
B. 葉先は狭い鋭頭で中肋は明瞭に突出する。
C. ナガハハリガネゴケ B. coronatum ではない。中肋の突出は短く,葉縁の反曲もかすか,葉形も細い披針形。
  ギンゴケ B. argenteum (既知種)でもない。陰湿な場所に生じるその変異型でもない。
D. 葉縁の舷はほとんど分化しない。
E. 葉基部両翼は全く下延しない。
F. マエバラマゴケ B.majebarae (既知種?)ではない。
  ナガハハリガネゴケ B. leptocaulon ではない。葉身細胞の幅が 13-18μより狭い。
  クロハリガネゴケ B. dichotomum ではない。葉身細胞の長さが 65-85μより短い。
  クモマハリガネゴケ B. lonchocaulon ではない。葉が小さく(±1.7*0.4mm),とても3*1mmにはならない。葉縁の反曲も弱くて不明瞭。
  チャボハリガネゴケ B. pallescens ではない。葉身細胞の幅が 13-16μより狭い。
  ホソハリガネゴケ B. caespiticum ではない。中肋の突出はあまり目立たず,葉縁の反曲も弱い。
  テリハハリガネゴケ B. recurvulum ではない。葉形が違う。楕円形になって広く尖ることはない。

こうして本種 B. paradoxum だけが残った。記載にもよく合っている。ただ,葉身細胞の「壁は薄い thin-walled」が気になったが,保育社の図鑑(検索表)に「膜は割り合いに厚い」となっていて安心した。他には,茎の上の方につく葉(淡緑)と下方の葉(褐色)の葉形・大きさが異なる(わずかだが明瞭),ことが特徴といえるかも知れない。葉身細胞も,上部の長い葉の方が大きい(形の違いも感じる)。また,ごく狭く認められないくらいだが,それでもはっきり反曲している葉縁も印象深い。

「ではない」の連続でたどり着いたに過ぎないが,この種を「本当に分かった」という日がいつか来るんだろうか。場所は分かっているので何度でも観察・採集はできるのだが,例え胞子体が見付かってもどうということはない気がする。似たようなものが山のようにあるので,別の種との比較対象が重要だが一地域にそんなに色々な種が出てくるはずもない。


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 一点の 偽りもなく 青田あり       山口誓子
 炎天の 誰も通らぬ 青田道       大矢銀潮
 白鷺の 頭が浮かび 青田風      南うみを

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