久しぶりの Brachytehcium である。今までに知っているのは・ナガヒツジゴケ B. buchananii ・ハネヒツジゴケ B. plumosum ・アオギヌゴケ B. populeum ・ヒモヒツジゴケ B. helminthocladum ・タニゴケ B. rivulare の 5種。あと可能性があるのは,アラハヒツジゴケ B. brotheri くらいか。
小さな流れのそばの灌木の茂みの中,転石の上にフワッと乗っていた。既知のBrachtecium の「どれにも似てない」ので採集することにした。主茎が長く伸びて,そこから左右直角に,あるいは上に向かって短く( 1cm前後)太い枝がずらりと並んで出る。
皺の目立つ尖った葉がぎっしり重なって付き(多少覆瓦状),狭い角度で斜上する。葉に透明感があることも含め,幾分アツブサゴケを思わせる。独特の枝の広がり方と太くて刺々しい葉の付き方,そしてパッとしない白っぽいような汚れたような色,が印象に残った。乾いても葉が枝に圧着するようなことはなく,そのままで変化しない。
帽に長毛が生えるのが著しい特徴ということだが(あるいは,雌苞葉の側糸 paraphysis),胞子体がないのでどうにもならない。第 1の手掛かりは見かけである。ネットの『こけの写真館』の写真にそっくりで,これだけで「同定終り」と言いたいくらいである。
http://www.ne.jp/asahi/koke/file/komanohitujigoke.htm
以下に傍証を幾つか挙げる。
(1) 葉が大きい。・・・・ 太い枝の中間部で長さ 3mmを越えるが(幅±1mm),本属中長さが 3mmに達するものは,他には ケヒツジゴケ B. wichurae しかない。
(2) 葉の縦皺が顕著。・・・・ これは非常によく目立つ。本属中最高かも知れない。中肋は結構長く 2/3程度まで。葉の上部にはかすかな歯がある。葉先は漸尖して(やや急に)細く長く尖るが,いわゆる毛状になることはない。
(3) 葉身細胞が線形。・・・・ 両端が鋭く尖り,細くて長いのが印象的。主として 75*5μ。B. wichurae はもっと広い。
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しんしんと 野は昼顔の 盛哉(かな) 瓜流
昼顔は 眩しき日をも 淡く受く 川島彷徨子
昼顔は 誰も来ないで ほしくて咲く 飯島晴子