各地のコケ目録などでこの名を見たことがないのだが,どうしてもヒメヒラゴケ N. pusilla と同じラベルを貼る気になれなかった。この型は 2度目の採集だが,var. pusilla とはあまりにも外観が違いすぎて同じものだと思うのが難しい。
今まで見てきた var. pusilla は,岩の垂直面や木の根元で水平に枝を広げていたが,こちらは樹幹の高い場所からダラ〜ッとぶら下がってゆらゆらしている。長いものは 10cmにもなり,枝は(二次茎から)短いのがまばらに出る。一方,var. pusilla は 3cm前後の枝が密に混み合って出て平面状の葉面になる。どっちとも言えない中間的な感じのものにはまだ出会ったことがない。
また,var. pendula があったのは,いずれも流れの水蒸気が常に立ち上っているような環境で,相当に暗いところだった。var. pusilla は比較的明るい開けた場所に多いように思う。
このように見た目の印象は随分違うのだが,視野を狭くして枝の一部や葉そのものを調べると,違いが全く分からなくなる(それぞれでの内部変化も多い)。単に環境の違いによる育ち方の差が出ただけ,という可能性もある。場所を交換して移植してみればはっきりすることだ。
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あぢさゐの 青あれば今日 しあはせに 仙田洋子
誰もゐぬ 紫陽花浄土 雨けぶる 古賀まり子
紫陽花や けふはをかしな 色に咲く 正岡子規