採集した記憶もないのに実体顕微鏡の視野に出てきて吃驚した。苔類には奇抜な葉形のものが多いが本種もかなりである。背中にフワッとふくれ腹側に曲がった葉が大きく 2裂,裂片は長毛状に尖る。腹片は内側に巻いて横長の袋状になり異様に目立つ。開口部も定かでなく,見たことがないような形をしている。
適当に剥がして持ち帰ったものの中に交じっていた。「採ったつもりはないのに‘あった’」という現象が苔類では時々起こる。初心者の証拠(特権)だ。このように,まだ気付いていない種が結構残っているに違いない。
日本では 1属 1種(残り 5種はすべて熱帯降雨林)で,形態はユニーク,油体は 1〜25個(普通 15個前後),同定に間違いのあろうはずはない。ただ,「分枝は少ない」(H. Inoue 1975)そうだが,激しく分枝を繰り返す。更に困るのは「腹葉はない」とされているのに,腹葉らしきものがはっきり見えることである。
このところ「同定はできるが一部記載と合わない」例が続いている。面白いとも言えるが妙に後を引く。コケの場合は自分で何とかするしかないようだ。高等植物はネット上が賑やかで羨ましい。
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つばな笛 海の碧さを いかにせむ 佐野まもる
風の茅花 何をうながす 思ひ出せず 宮津昭彦
茅花抜く 遠きひかりの 中にいて 早川三千代