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丹後の日記

アキウロコゴケ Jamesoniella autumnalis編集する
2008年06月11日17:07全体に公開
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ツボミゴケ科の未知の種を胞子体なしで同定。これは暗闇で手探りしているようなものでまともなやり方ではない。しかし無いものは仕方がないので,ツボミゴケ科であることを「公理」として始めることにした。公理が正しいかどうかには関知しない。公理とは本来そういうものである。

普通種だそうであるが採集場所はちっとも普通ではなかった。標高 500mの断崖の頂上で,他では見られないような植物が出現する地点である。隠岐でここにしかないというコケも何種かある。そばにアカヤスデゴケ Frullania davurica とケシゲリゴケ Nipponolejeunea pilifera もあったが,これらも他では 1度しか見たことがない。

ツボミゴケ科にしたのは単なる感じで何となく。アキウロコゴケ属を思い付いたのは,両側の葉が立ちあがって‘ 背側に偏向 ’し,茎頂ではほとんどくっつきそうになる形からである。しかし,保育社図鑑の絵を見てげんなり,綺麗な色がついているし,他の文献でもこんな芋虫のような図が出て来て,どうもその気になれない。ところが平凡社の図鑑の写真に気付いて急に元気が出た。「日陰の型」となっているが,群落を上から見るとまさにこのようになっている。

他に何か手掛かりがないかと考えていて,「油体の様子が特別なような・・・」と,気付いた。そこで一念発起," Family Jungermanniaceae of Japan (T. Amakawa 1959) " を使って,全 62種の「油体一覧表(数・大きさ・形・内部構造)」を作り始めた。驚いたことに「数」のデータを入力した時点でほとんど一意に絞られることが分かった。「油体の数が 5個以上で,軽く(しばしば)10個を越える(最大 15個)」ようなものは他にはない。10個程度になる種は 2,3あるが,「ほとんどが球形で径±5μ」という小さな油体のものは本種に限られる。

いったんは諦めてしまい,胞子体が熟する秋を待つ積もりだったが,「油体の一覧表」で早々に結論が出てしまった。未だに信じられない。種数の多い属や科では形質の一覧表が検索表以上に役立つことがある。本種の詳しい解説を 4種類読むことができたが,いずれも油体が‘ 多い・小さい・円い ’という事実を明示的に強調したものはなかった。


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 思ひ出の 道みな細し かもじ草        秋元不死男
 この径も やがてなくなる かもじぐさ      辻田克巳
 髢(かもじ)草 二つ違ひの あねいもと    水谷成一


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