恐るべき小ささである。長さは 3mm近くのもあったが,茎葉体の幅は 0.2-0.3mmくらいしかない。低地から高山までごく普通にある種のようだが,言われているように肉眼で見付けるのは楽ではなさそうだ。大きな純群落が目に止まれば何とかるかも知れないが。今回は実体顕微鏡下で,ケシゲリゴケ Nipponolejeunea pilifera をほぐして(ゴミ取り)いてアレッ?ということだった。
背片ははっきりと離在してほとんど縦につき,腹片は背片の 1/2以上でぷくっとふくらむ。強く印象に残る特異な姿で,覚えやすい種ではある。多少気になったのは コクサリゴケモドキ L. cucullata であるが,幸い「眼点細胞」に気付いたのではっきり否定できた。
背片の基部に眼点細胞(異形細胞)がある(普通 1個)のは重要な特徴であるが,常にあるとは限らないようだ。巨大な暗い油体が詰まっているような感じのもので,もしあれば明瞭に分かる。捜したのだが,汚れと勘違いして最初はなかなか気付かなかった。全くないものもある。油体は各細胞に 2-4個ということだが,変化が多く小さい輝点が沢山散らばっているようなのもある。
採集済みのイトコミミゴケ L. parva,コミミゴケ L. compacta を加え,Lejeunea 微小種 3点セット(自分的には)で,もう少し経験を増やしたい。まだ自分のものにはなっていない。気心の知れた友人ではなく,一二度見かけただけの知人のレベル。
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つつましく 色を重ねて 山桜 深谷治代
ひとり来て 見てゐる山の さくらかな 青柳志解樹
われ亡くて 山べのさくら 咲きにけり 森 澄雄