以前にも書いたが(08/1/8)この種は,胞子体の大きさが “MOSS FLORA” の記載と違っていて大いに悩んだものである。 「 Setae ca. 13mm long. ... Capsules ca. 0.9mm long. 」 となっているのだが,少なくとも隠岐産の標本( 2地点)では「〔朔〕柄長: ca. 20mm,〔朔〕: ca. 2mm×1mm」である。これはもうやむを得ないと思うことにした。
他には,〔朔〕の図の口部が広がっていることも気になっていた。保育社の図鑑でも先が太いラッパ形になっている。これはどうも 2形を呈するようで,蓋が取れたばかりの新鮮な状態では下ぶくれで口部の下が激しく括れるが,老成すると独特のラッパ形に変わってくるのではないか。標本で見るとどちらの形が多いかの違いはあるが,両方のものが交じって現れる。同属のフクロハイゴケ V. ferriei でもその傾向が見られた。また,保育社の図鑑の蓋の図は,先が少し円すぎるようだ。確かに鈍だが(成熟するにつれてそうなる)これほど極端ではなかった。
なお,枝は不規則で疎らに出(羽状ではない),葉の先端部は完全に滑らかなので,シマフクロハイゴケ V. reticulata ではない(伊豆七島,九州,琉球)。
1月初めに〔朔〕が頭を出した時から, 3,4日ごとに様子を見ていた。これくらい眺めていると身に沁みて忘れられなくなる。何しろ自宅の庭にあるのでイヤでも目に入った。
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いつの世も そしていままた さくら散る 藤岡筑邨
山盛の 花の吹雪や 犬の椀 一茶
繁忙は 無為に等しく 花散りて 古舘曹人