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丹後の日記

ヒロスジツリバリゴケ Campylopus gracilis編集する
2008年04月09日19:38全体に公開
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稀産の絶滅危惧種( 2類から 1類へ昇格)で気が引けるが,取りあえずここに置いておきたい。

断崖( 500m alt.)の縁の岩盤上(明るい木陰の水平面)に絨毯を敷き詰めたように広がっていた(厚さ 2cm)。色は黒みがかったモスグリーン。こんなにきつく固い密生は見たことがない。剥がしたらパカンと板状に取れてきた。家で標本用に小さく折ろうと思ったら力が要った。

シッポゴケ属 Dicranum の小型の仲間(翼部が断面で 1細胞層)だろうと思い込み,そのつもりで調べた。この亜属には厄介な印象を抱いていたのだが,文献をよく読んでみてそうでもないことがわかった。 6種が含まれるがそれぞれユニークな特徴があって曖昧さがない。小型のシッポゴケ属恐るるに足らずである。一時はナスシッポゴケ Dicranum leiodontum かと思ったが,結局このグループを諦めた。

行き詰まったので,サボッていた葉(2.5*0.35mm)の切片を作ってみた。断面で Dicranum ではないことは明白。切っていてヤマトフデゴケ C. japonicus の時のことを思い出した。柔らかくしなやかで妙に切れにくい。中肋は約 3層で腹側に大きく透明な表皮細胞が並ぶ。その上にやや小さい透明細胞,ここの隙間にわずかにステライド様のものが混じることもあるが明瞭ではない。背側の表皮細胞が大きくてデコボコ目立つのがこの種の特徴ではないのだろうか。野口先生の“MOSS FLORA”にこの種がないのが何とも残念である。

葉鞘部の肩の細胞は矩形で,菱形(C. schimperi)ではない。また,葉身中部縁よりの細胞も矩形で,うじむし型(クロツリバリゴケ C. atro-virens)ではない。この種の情報があまりないので,続けて観察する必要がある。短かくて(1/3)幅の広い葉をつける分枝が,かなり混じるのだがあれは何だろうか。


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 遠ざかる ものの跫音(あしおと) 花の冷     三宅希世女
 花冷や ツインルームに ひとり旅         広田恵美子
 生誕も 死も花冷えの 寝間ひとつ        福田甲子雄


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