田圃の縁の農道に延々とある小さなコケ(本体±6mm,〔朔〕柄±8mm)。他の地域でも見たことがある。〔朔〕は樽型で真下を向いて垂れ,頸部は丸くなって急に〔朔〕柄に移行する。胞子体の様子はギンゴケ B. argeteum によく似ている。上部の葉腋にぎっしり詰まっている肉芽もギンゴケそっくりである。
本種の特徴は,〔朔〕の下部が盛り上がってデコボコになることのようだが,まだ色づくほど成熟してなくて確認ができない。〔朔〕の頸部の丸さ・太さを頼りに検索表で本種にたどり着いたのだが,実は記載に一致しない点がかなりある。
(1) 「葉が覆瓦状につく」 ⇒ とてもそうは見えない。
(2) 「枝葉は三角形状披針形」 ⇒ 綺麗な卵状披針形である。
(3) 「中肋は長く突出」 ⇒ 色々だがそう長くはない。
(4) 「葉基部の細胞は長い矩形(40-65*13-20μ)」 ⇒ そんなに長くはない。
実は,欧米の図鑑の記述だとクロハリガネゴケ B. dichotomum = B. bicolor かとも思えるのだが,平凡社の図鑑では「葉身細胞の長さが 65-85μ」となっていて問題にならない。実測値は 40-50μしかなかった。ナガハリガネゴケ B. lonchocaulon という種もあるが,これは実体がよく分からない(〔朔〕は日本未発見)。
かといって他に近そうな種も見付からない。結局訳が分からなくなって諦めた。普通種に思えるのだが・・・。無性芽の大きさや形が重要なはずなのに,全く言及がないのも不思議である。
---------------------------------
林間や 水音ばかり 春浅き 名和三幹竹
蕗の薹に 春浅き日影 ありにけり 嶋田青峰
杉山に 微塵の光 春浅し 小松崎爽青