隠岐にあってはならいようなものである。分布が『西南日本の太平洋岸に沿った地域(分布の北限は伊豆諸島の御蔵島)から琉球列島,台湾を経て・・・(J. Hasegawa 1992)』ということになっている。確かに,本州では東京(御蔵島)・静岡・山口(光市)の記録しか見付けることができなかった。
田圃の土手に広がっているのだが,団子状に盛り上がったマットでコケのようには見えなかった。ほぐしてみると中はモヤシのようで白く,立ち上がっているので仮根がないと表裏の区別も定かではない。透明な表皮細胞に巨大な葉緑体が 1個ずつあったので,初めてツノゴケ類だろうということにした。生え方を別にすれば葉状体の形には違和感がない。
平凡社の図鑑によると,葉状体の「縁」に無性芽ができるものは本種しかない。"Taxonomical studies on Asian Anthocerotae (J. HASEGAWA 1984)" にも詳細な解説があるが,無性芽のできる場所・形とも本種以外の何者でもない。
同論文には無性芽だけで十分だと書いてあるのだが,〔朔〕がついていなくて駄目押しができないのが残念である。長さ 10cmもある〔朔〕や,400μもある弾糸を見てみたいものである。
数年前に造成した水田であるが,無性芽を人が運んだとは思えない。水鳥について来たんだろうか。他の場所も調べた方がよい。信じるにはもう少し時間がかかりそうだ。
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早春の 流水早し 猫柳 西山泊雲
早春の 光はじける 雑木山 村上澄子
少女佇(た)つ そこに早春の 日のかけら 嶋田青峰