[mixi] チヂレバツノゴケ　Anthoceros subtilis

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丹後の日記

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チヂレバツノゴケ　Anthoceros subtilis編集する: 2008年02月03日21:18; 3 view

本種の分布は「本州（関東・中部地方），九州；東アジア，インドシナ，ヒマラヤ。」となっていて，中国地方その他が抜けている。しかも，1998年に「チヂレバツノゴケとその近縁種の分布と分類（長谷川二郎）」という論文が出ているので，この分布情報は信頼できると思われる。よって，ナガサキツノゴケ A. puncutata とするのが順当なのだが，どうしてもそうできなかった。いったんこのままにしておいて，その論文を読んでみることにしたい。

図鑑の記載は，「前種に似るが（ナガサキツノゴケのこと）」としか書いてない。きっと見分けがつかないくらいよく似ているのだろう。従ってただ一点，検索表にある「胞子表面の刺状突起」を調べるしか見分ける方法がない。胞子の表面に鋭く高い刺状突起が出ることが本属を一意に特徴づけるが，求心面の様子が問題になる。ナガサキツノゴケ：「網目状の模様」対，チヂレバツノゴケ：「刺状の突起」の比較である。

採集品では，なるほど求心面では多少高さが低くはなるが，鋭い刺がしばしば認められた。時には，刺と言うより「先が鈍形の突出」として見えることもある。「網目模様（実体はあばた状の低いふくらみ）」と言うにはかなり違和感がある。運良く手許に専門家が同定したナガサキツノゴケの標本があったのだが（何故かカナダ産），刺の高さはもっと低く，鋭さも弱い。求心面の凸凹もほとんど感じない。これが有意の差であるかどうかは知らない。

実は，熟した胞子が見付からなくて苦労した。蒴は黒くなって倒れてしまっているのもあるのだが，裂開したものが一例もない。中の胞子は求心面側（多分）で 3個がくっつき，全体が透明な厚い粘膜に包まれていて，細胞分裂の途中で成長を停止したような姿である。暖地のものなので，寒さのあまり力尽きて萎れたのだろうか。従って，納得のゆくほどの観察はできていない。探しまわったら例外的に成熟したのが少数混じっていただけである。

印象に残った点。(1) 葉縁は細かく切れ込み波打ち，更に背面には不規則に板状（！）の突起が立ち上がり，ごちゃごちゃでくしゃくしゃ。(2) 葉状体を引き抜いたりちぎったりすると，長く尾を引いて粘っこい透明な粘液が大量に出て来る。

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　陽だまりの　尾根の細道　冬蕨　　　　　　　　　丸山宗二
　あのすくつと　伸びてゐるのが　冬蕨　　　　　　加藤仙太郎
　寒蕨　ゆえの淡さを　記憶せり　　　　　　　　　　小宅容義