ネジクチゴケはよく知っている積もりだったが,どうも 2つの型があるような気がする。採集したのは車道のアスファルト舗装上で,よく陽の当たる乾燥した場所である。乾いた姿はチュウゴクネジクチゴケ Didymodon vinealis にそっくりで見分けがつかない。
細胞腔上に縁に沿って,小さなパピラがぎっしり並びはっきり C字型のものも混じる。2,3日ぐずぐず調べていたが結局行き先がなくなってしまった。「中肋上部背面が平滑」であったので本種の可能性を初めから除外していた為である。仮の結論ではあるが,これはネジクチゴケの変異型なのではないだろうか。唯一の気休めは欧米の図鑑にあった,Very variable や Unending variations という言葉である。プレパラートを量産したが徒労感はあまりない。
普通型と今回の採集品との違いを書いておいて,今後の宿題とすることにした。
(1) 乾くと葉身がやや管状に見え,かなり巻縮する。⇒ あまり管状にはならず,ゆるくカーブして茎に接着する程度。巻く感じにはならない。
(2) 葉は長い舌形で円頭又は鈍頭。 ⇒ 長い三角形状の印象が強く葉先は尖る。
(3) 中肋上部背面の表皮細胞にはパピラが縦に並ぶ。 ⇒ 平滑。ごく稀に低いパピラが見えることもある。
強い日射しと乾燥による生態型かも知れない。外観ではとても同一種とは思えないが・・・。どっちつかずの中間型もあるんだろうか?
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藪柑子 やうやく赤き 枯木なか 樋口泰
藪柑子 夢のなかにも 陽が差して 櫻井博道
遠き日の 小さき恋や 藪柑子 鈴木龍江