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丹後の日記

ハットリイトヤナギゴケ Platydictya hattorii編集する
2007年11月27日15:38全体に公開
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また変なものを採集した。だいたい蘚か苔かの区別ができなかった。この属は苔として記載されたこともあるらしい。照葉林内の流れの近く,転石に濃緑のものが貼り付いていた。ヒメシノブゴケ Thidium cymbifolium の小さいのが一部混生するような環境である。苔類の一種のつもりで採ったが,筋のような細い糸がバリバリと剥げてきて,強そうなので現地では蘚類かと思った。

所属の見当が付かないので,秋山先生の「特徴による蘚類同定の手引き」で,(1) 中肋は短く不明瞭,(2) 植物体は細い糸くず状,(3) 低地−山地の木の根元・岩上,葉細胞は平滑,(4) 葉細胞は短矩形−六角形,という条件で検索した。そしたらこの属に行き着いたのだが,絶対というわけではない。

ただ,以下のように本種の記載によく合っている。
(1) 茎ははい長さは 1〜1.5cm,中心束を欠く。仮根は平滑。
(2) 茎はごく細く, 径 0.05(-0.07)mm。
(3) 葉は極端に小さく,0.35*0.10mm。ごく稀に 0.40*0.13mmくらいのがある。
(4) 葉の中肋は太くてやや長く,葉頂の 1/5〜1/4程度。薄くて多少暗く見える程度だが曖昧さはない。葉は漸尖し,上部で急に細く尖るような傾向は全くない。
(5) 葉身細胞の上隅に小さな突起があって明るく光る。これは明瞭。
(6) 葉身細胞は,長めの六角形〜紡錘形であるが,翼部では方形・短矩形に近づく。

以上で十分なようだが,実は深刻な問題がある。野口先生の“MOSS FLORA”によると,葉身細胞は 12-15*4.0-4.5μmとなっているのだが,実測すると長さが 8-12.5μmくらいしかない。平凡社の図鑑では 15-30μm*5-8μmとなっている。細胞の大きさは揃っていて大きな変化がないので余計に不思議である。また,「葉身細胞が薄壁」という点も気になる。自分にはやや厚膜に見える。なお,無性芽については,見付からなくてもよいことにする。

ほとんど記録のない種のようで「岡山県中部 :少ない」,だけが見付かった。しかし,属が合っていれば本種にせざるを得ないように思う。盛んに不規則な枝分かれをし,こんな小さい葉を疎生する(鞭枝状)ものが,他にもあるんだろうか?暇なときに総当りするしかないかも知れない。胞子体は見付かっていないという。


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 落葉降る 中や人遇(あ)ひ 人別れ         堀江金剛
 落つる葉の 落ちぬ葉に言ふ さやうなら      金子径
 レクイエム なほ耳にあり 落葉踏む         西村和子

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