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丹後の日記

ホソエヘチマゴケ (2) Pohlia proligera編集する
2007年11月23日22:18全体に公開
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前回本種かも知れないと言っていたものは,普通種ケヘチマゴケ P. flexuosa に過ぎなかったようだ。やはりこの属 Pohlia は難しい。胞子体があれば少しは楽かも知れないが,配偶体の差が今一つ明瞭ではない。これはコケ自体の責任というより情報不足のためだと思う。

今回の採集品には,茎の先に無性芽がぎっしりついていたのでこれが有力な手掛かりになった。細く伸びてねじれ,先がしばしば 3つに分かれる(葉の原基)ことから,平凡社の検索表では P. flexuosa と本種のどちらかということになる(葉は細い披針形)。まず P. flexuosa ではあり得ないことを確かめなければならない。何を今更と思うのだがこれが結構難しい。

本品は乾いても葉が茎に接着せず,斜上〜大きく開出,しかも葉がねじれる。そして,葉の形は細めのきれいな披針形である。一方,P. flexuosa は乾くと葉が茎に接するように上向きに揃い,開出してねじれたりはしない(茎頂の若い葉を除く)。また葉形は「基部が最も幅広い」三角形状の披針形が基本である。

次に,平凡社の図鑑にはない種だがホソヘチマゴケ P. leucostoma ではないことも確認する必要がある。葉が疎につけば P. leucostoma,密なら本種だそうであるが,実は採集品の葉は非常にまばらで隙間だらけである。しかも,やや光沢があるということなのにそれも全く感じない。しかし以下の理由で,強引に本種 P. proligera と同定する。

 (1) 葉がまばらなのは湿岩上で徒長したためで,しかも葉が大きく開出するのでよけいそう見えるのではないか。これは現地でもっと観察が必要。
 (2) 光沢を感じないのは,以前にホザキミスゴケ P. camptotrachela var. vestitissima とされていた型なのだと思われる(今は本種の異名)。
 (3) P. leucostoma は乾いて弱く茎に接するということで,「開いてねじれる」という記載はない。これは分かりやすい。
 (3) 葉身中部の細胞は長さ 100μに達するものが非常に多く,P. leucostoma の 65-75μは短すぎる。これが一番安心感がある。

過去に P. leucostoma としていた(仮に)標本が 2つあるが,この 2つははっきり別のものであるし,少なくとも P. proligera や P. flexuosa ではない。しばらく「真相は藪の中」か?


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