のびのび育った条件のよい群落に出会ってやっと納得ができた。2度目の採集で確信が強まるということはよくある。これで本種の同定にケリがついたので,後は環境や野外での見え方に注意を集中できる。
多分,情報の少なさが長くかかった原因である。保育社の図鑑には載ってないし,平凡社の図鑑は検索表だけで写真もない。葉の展開の仕方が特徴的で是非写真が欲しい種なのだが。生態写真なるもの一般について言えば,純粋に同定の観点からは何の役にも立たたなかったり,かえって有害であったり(イメージが固定されて)するものも多い。
『葉は上半部が反り返り,互いに密接するように扁平に展開する。油体に眼点がある。本州〜九州。』,検索表のこの一文で判断しなければならない。まず「反り返り」の意味が曖昧である。実は葉先が上側(背)に曲がることであった(蘚類での内曲)。
「互いに密接するように扁平に展開」,これも苦心の産物であろう。こういう簡潔な表現になるのはやむを得ないと思うが,意味ははっきりしない。「葉が次々にぴったり重なって並び,上から(背側)見ると平らな面になる」のだが,こう書いても何のことやら分からない。この様子は著しい特徴なので,どうしても拡大写真が欲しくなる。2例の図を見たがうまく表現できてはいなかった。
「油体に眼点がある」,これも大いに悩んだ。大きな眼点のできた油体は確かにあるのだが,探すのに苦労するくらい少ない。そして,焦点をずらすと消えたりすることもあって,いよいよ自信を喪失しやすい。
以前書いたことに加え,以下の点が印象に残った(濡らした状態)。
(1) 多肉質で全体に固くこわばった感じ。葉は厚味があってごわごわしている。
(2) 茎葉体は茎でキールして三角形の樋状になり,その厚さがすごく目立つ。
(3) 茎が異様に太く厚さ 0.6mmに達するが,近縁種にこんなものはない。
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茶の花の 誰にともなく 咲き出でし 坂本悟
茶の花や 白にも黄にも おぼつかな 蕪村
茶の花や 乾ききつたる 昼の色 桃隣