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丹後の日記

マルフサゴケ (2) Plagiothecium cavifolium編集する
2007年11月18日17:24全体に公開
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『ミヤマサナダゴケ P. nemorale との区別が何とも鬱陶しい。差異はすべて程度の違いで,決定的な違いはないようにも思える。...スッキリ分かるまでにはまだ時間がかかりそうだ。 』,と書いたのが去年の 10/31。思った通り間違いだった。全く,ミヤマサナダゴケは量もすごいが変化もすごい。

確かに Plagiothecium の種内の変異幅は相当大きそうだが,種間の分離は意外にはっきりしているような気がしてきた。今までは記載の読み方が足りなかった。分かりやすい簡単な種で長く悩んだりその逆もあったり,どうも人によって苦労する場所に違いがあるようだ。本属で悶々としてきたのも一個人史であった。

(1) 葉は丸くついて扁平な感じがない。まん丸なものも多い。はっきり覆瓦状でネズミノオゴケをふっくらさせたよう。目視ではこれが一番印象深い。枝は立ち上がったり横に倒れたりする丸い棒状で,P. nemorale のように斜上したり這ったりするような感じを与えない。

(2) 乾湿で変化しない。わざわざ図鑑に図を載せてある(保育社),葉が開いて隙間から茎が見えるような独特な縮れ方は,P. nemorale とオオサナダゴケ P. neckeroideum に限られるようである。この縮れ方の差は顕著で迷う余地がない。

(3) 葉身細胞の幅が 8-12(-15)μ。P. nemorale は 15-20(-25)μなのでミクロ的にはこれが一番確実で大きな相違点。一般に,本属では細胞の幅が非常に役立つ分類形質である。

(4) 葉頂突出部先端の 1細胞が長く伸びて針状に尖る。これは採集品 1例だけの個人的な観察なので一般的に言えることかどうかは分からない。

(5) 葉の大きさ・形・尖り方・対称性・凹みなどは,参考にはなるが決定的な証拠としては使えない。P. nemorale が巧みに擬態するからである。迷ったらまず(2)を使うのがよい。


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コメント

  • Hookeria!!

    Hookeria!!2007年11月29日 20:51 削除
    お久しぶりです。
    私もP. cavifoliumではないかと見当をつけた種を見ているのですが、
    下延部の細胞は保育社の図鑑の通りでしょうか?
    図鑑では細長い細胞が最下部の1つだけとなっていますが
    私が見ているものは2列の細長い細胞(外側がより長い)が2-3組ほど続いて最下部で1細胞となっています。
    最下部付近で細胞壁が外側へ尖っているのは私の標本でも確認できます。
    黄褐色で葉は長さ1.8mm程度、葉身細胞の幅は12-15μmで
    > 葉頂突出部先端の 1細胞が長く伸びて針状に尖る。
    という特徴も当てはまっています。
    2叉した中肋の片方が時に葉長の1/2に達しているのも気なります。
  • 丹後

    丹後2007年11月29日 23:41 削除
    ≫ Hookeria!! さん

    ちょっと検鏡する時間がありませんが,仰るように下延部に「細長い細胞」が多い例と葉の中肋が長い例,別の論文の図版で確認しました。私のも保育社の図鑑とは一致していなかったように記憶しています。

    >黄褐色で葉は長さ1.8mm程度、葉身細胞の幅は12-15μmで
    マルフサゴケに間違いありません。特に細胞の幅は一目で分かるほど感じの違うものです。
  • Hookeria!!

    Hookeria!!2007年11月30日 21:01 削除
    ご教示ありがとうございます。

    > 下延部に「細長い細胞」が多い例と葉の中肋が長い例,別の論文の図版で確認しました。私のも保育社の図鑑とは一致していなかったように記憶しています。

    そうですか。安心しました。またよろしくお願いします。

丹後

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