隠岐の記録があったので探していたがやっと見付かった。分布は広いが,量的には「何処にでもある」というほどではないのかも知れない。
一度見ただけで好みの環境ははっきりしないが,小さな滝(400m alt.)の裏側の岩壁に着いていた(純群落)。ややオーバーハングしているので濡れないが,空中湿度は高いに違いない。明るい光を浴びて銀色に光り,一瞬これはコケだろうかと思った。よく写真にある,ぎっしり重なって垂れ下がるような感じはなかった。「きれいで見事な」生態写真が必ずしも「普通の姿」を表しているわけではない,ということか。人物でいえば,日常の姿を知りたいのに盛装したよそ行きの写真を見せられるようなものだ。
他に似たものがない変わった形をしていて,知っていればすぐに分かるコケである。よく「ホウオウゴケのように」と言われるが,よく見ると葉の構造は全く似ていない。単に普通の葉が中肋で強く折り畳まれているだけである。葉が固く茎に密着して広がらない点も異なる。何故こんな形をしているのだろうか。学名の xiph は剣のことらしいが,確かに刃物の印象がある。
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村人の 変らぬくらし 吊し柿 斉籐みのる
干柿や 同じ日向に 猫がゐて 榎本虎山
世の端の その端に住み 柿吊す 村越化石