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丹後の日記

チュウゴクネジクチゴケ Didymodon vinealis編集する
2007年10月29日20:47全体に公開
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以前からきっとあるはずと気になっていたものだが,このコケの実体が今一つはっきりしなかった。採集品には胞子体も無性芽もついていない。しかしこの際思い切って決着をつけることにする(仮の)。特に疑わしい点もなかったのだが,正直なところスッキリした後味でもない。

ホソバギボウシゴケ Schistidium strictum と似たような環境に似たような姿で広がっていた。今までにも大きな群落を何度か見ているような気がする。湿った状態での葉の見え方が確かに記憶にある。狭い三角形に見えて鋭く尖り(実際は卵状披針形で葉縁は強く反曲),ピッと直線状に斜め上に開く(erect-spreading)。葉面が溝状に凹み,両縁と葉先が鈍い白に光るのが印象的である。乾いても多少よれよれになってゆるく茎に接着する程度。縮れる感じではない。葉はやや疎らに付いていて,茎頂付近でやや大きく多くなる。

多形な種であるのか平凡社の図鑑と“MOSS FLORA”の記載(Barbula constricta)に微妙な違いがあってややこしい。葉身細胞は基本的には±10μの矩形で,タイルを敷き詰めたようにきれいに並ぶ。中央部が最も整った正方形,上部に行くと不定形のが少し混じる。下に行くほど大きな長方形に変化し,はっきりと厚膜になる。平凡社の図鑑には「薄壁」とあるが,採集品は相当な厚膜であった。『平滑か1-2個の大きなパピラ』についても,かすかなマミラでしかない。妙に変異の多い種だ(大丈夫か?)。

なお平凡社の図鑑で,図版の葉身細胞は不定型で角張って見えるが,標本でいったん乾燥させるとこうなるのではないだろうか。生きている細胞は,角の丸いきれいな矩形である。また,無性芽は目に見えないくらい小さそうな気がするので要注意。

本当は混同しやすいホソバギボウシゴケとの違いを書いておくべきなのだが,疲れてきたので省略。もっとも,二つを並べて比べれば,何も言わなくても別なものだと分かる(当り前のことだ)。


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 風立つや 尻曲りたる 秋の茄子       小松崎爽青
 秋茄子の つやつや人の 気配なし      雨宮弥紅
 茄子や皆 事の終るは 寂しけれ       永田耕衣

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丹後

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