「中肋が長く突出」して非常に目立ち,(0.3) 0.4 - 0.5 (0.6)mmもある。突出というレベルを越えていて,はっきりした「針状の芒」である(葉の長さ全体の 1/4)。そして,「葉縁は全く反曲しない」。検索表(平凡社)で,この 2つをキーにすると以下の 3種が出てくる。葉の舷が不明瞭なグループ。
マエバラマゴケ B. radiculosum × ・・・中肋の突出が短か過ぎる。
ナガハリガネゴケ B. leptocaulon × ・・・葉身細胞が短く,幅が広い。超稀産種。
クロハリガネゴケ B. dichotomum; B. bicolor × ・・・茎の高さ 5mm以下。
該当なしになるので,「葉縁の反曲」の方を無視することにした。いいんだろうか?
ナガハハリガネゴケ B. coronatum × ・・・葉が三角状披針形で覆瓦状につく。
クモマハリガネゴケ B. lonchocaulon × ・・・葉が 2倍の大きさ。超稀産種。
チャボハリガネゴケ B. pallescens × ・・・葉の大きさが 2倍以上。
ヤマハリガネゴケ B. praradoxum × ・・・中肋は短く突出。
テリハハリガネゴケ B. recurvulum × ・・・中肋がほとんど突出しない。葉の幅が広い。
こうして本種だけが ○。葉縁が反曲しないという一点を除けば記載とよく一致する。しかし,全く平らで反曲の兆候もなし,というのはかなり気になる。
ここまで書いて,家の裏の舗装路(アスファルト)にハリガネゴケ B. capillare を採りに行った。観察中に気付いた妙なことを確かめるためである。ピンセットの先がちょっとでも葉面に触れるとそこが白化して透明な穴があく。検鏡してみると葉緑粒がなくなって細胞が透明になっていた。すぐに葉緑粒が飛び出すようだ。B. capillare でもやはり同じようになることが分かった。他に気付いたのは,中肋の突出が若い葉では控え目であること。このことは他の種についても言える。
そして呆れたことに,今悩んでいる本種と同じものが,同じ場所に点々とあった。どうも普通種のようである。かすかにではあるが葉縁の一部が反曲していた。今までは,B. capillare と区別ができず注意してなかったようだ。本種は乾いても葉がゆるく茎に接する程度で,決して捩れない。
また,ナガハハリガネゴケ B. coronatum も見えてない可能性がある。どこかそこらにありそうな気になってきた。
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