道端の岩っぽい崖で普通に見かけるものだが,巨大なのを採集した。すんなりとは受け入れがたいのだが,かと言って他の種には当てはまるものがない。多少の違和感をメモして残すことにする。
(1) 茎の高さが 2cmを越えているが,通常のものはせいぜい 1.5cmほどであろう。しかし,よく育つとこれくらいになるのかも知れない。
(2) 葉の大きさが 2.6×0.6mmで,標準的な 1.3-1.7×0.3-0.4mmより明らかに大きい。これが一番違う点。
(3) 葉身中部の細胞が,はっきりとした矩形で幅 5μを越える。細長い線形(幅の実測値は 4μ以下)に見える通常品とはだいぶ印象が異なる。
(4) 翼部の細胞の長さがあまり短くならない。これは,急激に短くなって正方形に近づくのが普通。茎葉の見かけの大きさ以外に,細胞の形にも違いがあるようだ。
(5) 中肋が芒状に延び出して先端の 1細胞が針のように尖る。普通は例え延びても短いし,先端が 1細胞であることもほとんどない。芒の長さは普通種の 2倍以上(0.4mm)でよく目立つ。
(6) 葉身下部の形や葉縁の反曲の様子,細胞のパピラなどは,標準的なものとほぼ一致している。胞子体も含め標準品を ×1.5倍した感じである。
それにしても,今まで日本でマキバサワゴケ P. revoluta と同定されていたコケは,何処へ行ったんだろうか。学名上はオオサワゴケ P. turneriana のシノニムという結論のようであるが,とても同じものを指していたとは思えない。
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いつとなく 草の紅葉の はじまりぬ 加藤三七子
廃舟に 幾年月や 草紅葉 岸田潮二
奇はつひに 凡に及ばず 草紅葉 富安風生