普通種コツクシサワゴケ P. thwaitesii との区別が重要である。他に間違えそうな種はない。
コツクシサワゴケ
(1) 葉縁は明瞭に反曲する。×100 程度で観察するとよく分かる。
(2) 葉は三角状の披針形であるが,幅が基部(付け根 Insertion)でわずかに狭くなる。つまり,基部のすぐ上がかすかに円く膨らむ。
(3) 葉身細胞は基部で急激に短くなり,特に両翼では方形のものが多く混じる。
オオサワゴケ
(1) 葉縁はほとんど反曲しない。特に葉下部では完全に平坦。
(2) 葉は細長い三角形で,基部(文字通り)が最も幅広く,両縁は直線。
(3) 葉身細胞は,基部に近づくと多少短い矩形になるが,決して方形にはならない。
散歩の途中,道路際の湿崖からつまんで帰った。コツクシサワゴケと思ったが場所に多少違和感があったのかも知れない。一年中陽の当たらないような北向きの断崖で,裸の岩が露出してその上に直接付いていた。
採集品は和名に似合わぬ小さなものだったが,コツクシサワゴケに比べはるかに柔らかいという感じを持った。何よりも驚いたのは,茎の先端に無性芽の塊ができることで,そのような茎は上部ほど葉が短く疎らになっている。茎の上に行くほど葉が長く密になるのが通常なので,先細りで尖って見える姿は強い印象を与える。
『校庭のコケ』(全国農村教育協会)が,コツクシサワゴケではなく本種を取り上げているのが興味深い。この本の登載種は数こそ多くないが,普通の入門書が一度も取り上げて来なかったような種がきちんと選ばれている。そしてその種が身近で見付かる。選定の基準がしっかりしていて,どれだけ助けられたことか。
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無花果の 熟れ始めたる 縞目かな 小田切輝雄
いちじくの 生あたたかき 甘さかな 荒井半兆
生きてゐる こと小さくて いちじく食ふ 細見綾子
今の時期では、カマサワゴケも無性芽をたまにつけます。採集するときに手にポロポロつく事があります。無性芽というより、早落性小枝と言えばいいでしょうか。
カマサワゴケはよく目にしますが,無性芽を見たことはないです。珍しいケースかもしれません。他種ではホウライサワゴケも「しばしば肉芽状の無性芽をつける」そうです。
この属,環境に依るのか時々“超巨大”な個体に出会って驚かされます。例えばカマサワゴケ,図鑑に「2-5cm」となっていますが本当でした。
カマサワについては、ホウライの可能性を疑ったものの、中肋が葉先から少し出ていたので…………
平凡社を読むとオオサワは葉の背面の細胞は平滑、コツクシは背面の葉身細胞下端にパピラがあるみたいです。腹面については両者は同じなようです。