身近にある普通種の名前がはっきりしないと,何とも気分の悪いものである。その代表がハイゴケ・トヤマシノブゴケ・ナガヒツジゴケ・オオホウキゴケであったが,やっと 4つ目が同定できた。コケを始めてから 3年かかっている。大袈裟に言えば,これで肩の荷が下りてやっと一人前になれた気がする。
特に本属の場合,難解という先入観に加え,検索表の用語が特殊で意味が理解できなかったせいもある。尼川大録博士の検索表全体を何度も読んでいたら,重要な分類形質(目の付け所)が分かってきた。この検索表は通常のものの 2倍くらい詳しい(文が長い)。世に検索表ほど繰り返し真剣に読まれる文章もないと思うが,簡潔であっては具合が悪い。冗長なくらい情報を詰め込んだのがよいと思う。確信を持って分岐ができるように。
Jungermannia はまだ 4種しか知らないが,次は隠岐の記録がある ツクシツボミゴケ J. truncata と ツツソロイゴケ J. subulata が目標である。また,違うとは思うが カタツボミゴケ J. kyushuensis らしきものも見ている。
本種は油体が非常に壊れやすいことに気付いた。ちょっと乾燥するとすぐ(一日)ダメになるのはよいとして,検鏡中(濡れた状態)でも次々に分解・拡散して細胞が暗転する。もちろん生きている時はそんなに壊れてはいない。葉は茎から取り外されたのが分かるのだろうか。
本属一般に言えることかも知れないが,葉形・トリゴン・ベルカ・油体・眼点などはかなり変化するので,結論を急ぐとまず間違える。
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うつむきて 秋海棠の 花咲きぬ 吉村悦女
秋海棠 西瓜の色に 咲にけり 芭蕉
蕊の黄を 堅く啣(ふく)みぬ 秋海棠 富安風生