放牧の牛が踏むかも知れないので,自生地の一つにロープで垣をしてもらった。何のための囲いか分からなくては変だということで,簡単な標識(説明板)を付けることになった。国立公園内で,近くに「自然探検○○コース??」があったりするため,時々人が来ることもあるのだ。
“日本蘚苔類学会会報”で岩月善之助博士による「短報 ヤマトヒョウタンゴケの新産地(1982 Vol.3-4)」を読むことができた。
『本種は1899年に Brotherus により長崎から記載されたが,現在までに僅かに香川県と台湾で産地が追加されただけの珍しい蘚である。(中略)近頃筆者はこの種を福岡県と山口県から見出したので報告しておく。』
結局以下のようなことになりそうである。
1899年 長崎(Type)
1929年 和歌山市(広島大学所蔵標本)
?年 香川県
?年 台湾
1975年 山口県吉城郡小郡町
1980年 福岡市東区箱崎
2005年 島根県(隠岐島)
そして,2000年の『環境省 レッドデータブック』でのカテゴリーが「情報不足」。異常な少なさである。何故こんなに記録が少ないのだろう。毎年 5月になると盛んに朔を付け,決して見付けにくいものではないのだが。
標本はかなり昔のものだが,何故絶えてしまわないのだろうか。台湾で見付かっているのに,九州中南部の記録がないのも妙な気がする。一体どこで繁殖を続けているのか不思議だ。隠岐でも狭い一地域のみで他ではまだ見ていない。コケにはこのような例が時々あるんだろうか?
鳥のトキが祖父母の時代には隠岐にもいたらしい。まさか同じ運命ではないと思うが。
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青ぶだう もののみつるは ひそかなる 奥津迢牛
いのちとは 透けてゐるもの 青葡萄 岩岡中正
ことごとく 鮮明な思惟 青葡萄 小田垣晶子