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丹後の日記

コウヤノマンネングサ Climacium japonicum編集する
2007年08月06日17:49全体に公開
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これ以上はないというほどのはっきりした樹状になる。二次茎は頑丈で高く, 8〜12cmくらい。多くの枝をほぼ水平に広げ,茎の上部は多少湾曲してやや一方向に傾く感じになる。

以上のことから C. japonicum にしたが,次のようにフロウソウ C. dendroides ではないのか?と思われる点もある。
(1) 枝先が細くなって尖るというが,平凡社の図鑑の写真のようにはならない。
(2) 枝葉の先はむしろ丸味のある鈍で,鋭く尖る感じはない。縦皺も少なく両翼上部のくびれもはっきりしない。
(3) 何よりも中肋背面上部の歯が見当たらない。

ここまで書いてきてまた自信がなくなったので,同定済みの標本(Coll. & det. Z.Iwatsuki, Nagano-ken, 900m alt.)を見ることにした(わざと我慢していた)。袋を空けた瞬間「違う!」と気付いた。葉が枝に丸く接着して先の尖った紙縒(こより)に見え,全然印象が異なる。枝の数もはるかに(3倍以上)多い。水平に傾ぐ茎もある。葉身の縦皺が多く下部のくびれも明瞭。葉先に丸味はなくはっきり尖る。

ただ,中肋の歯についてはない場合の方が多かった。歯がある場合は(中肋先端を含め約 3個)長く鋭いので見落とす心配はない。

C.dendoroides にしきれなかった理由に,「大き過ぎる」こと以外にも,枝が開いて『MOSS FLORA』 の全形図と一致しないということもあった。しかし,この図が乾燥状態だということを忘れていた。乾くと枝が立って空を向く傾向が確かにある。

昨日から何時間もかけてはっきりしなかったことが,同定済みの標本を調べたら数分で C. dendorides に決まった。標本を持っていなかったら,いつまで経っても宙ぶらりんだったはずだ。何とも複雑な気分である。胞子体以外に決定的な差異がなく,皆程度の違いなのでやむを得ない,と言えなくもないが。


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 今年また 同じ所に 白木槿         瀧井孝作
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 一生と いえど一日 花木槿         三田村弘子


コメント

  • プロジェクトK

    プロジェクトK2007年08月06日 18:12 削除
    検索キーを忘れましたが、茎を切れば簡単ですよ。
  • 丹後

    丹後2007年08月06日 21:51 削除
    プロジェクトK1号 さん ありがとうございます。

    中心束のことがちょっと気になったのですが,「両方ともあるし」と思ってしまいました。有無だけの問題ではなかったですね。

    中心束の中央部分に,非常に小さく形も大きさも不定の(滅茶滅茶) 7,8個内外の細胞があるのは両種とも共通です。が,そこの部分を取り巻く細胞の大きさに違いがあるように思えます。

    C. japonicum のは,周囲に「中間段階の」大きさの細胞があって,中心束が 2層の細胞群からなっているように見えます。これは明瞭。従って<中心束が太い>。

    ところが,C. dendroides の方は,2層めを構成する細胞が相当大きく「外部との差が曖昧」です。そのため中央部分のみで中心束ができているように見えます。従って< 中心束が細い>。

    しかし,これも「程度の問題」に近く,実物又は図版がないと迷うかも知れません。あと,茎表皮の小型厚壁細胞群も C. dendroides では急激に薄膜透明な細胞に変化する(つまり表皮が薄い)ようですが,はっきりしません。
  • KEIZ☆

    KEIZ☆2007年08月06日 22:10 削除
    C. dendroides ですが,水辺に近い(湿潤な)ところに生育しているものは,かなり大きくなります.そして,大きくなると,C. japonicumのように曲がり一見,見間違えることがあります.また,倒れたりはがれたりした個体は,ときどき茎の先端が匍匐することがあります(私が育てているものが,このような姿になりました).
    私自身,岩手県の池のほとりで見たC. dendroidesは,かなり大きく先が曲がり,見間違えました.
  • 丹後

    丹後2007年08月06日 23:22 削除
    KEIZO さん,貴重なご指摘ありがとうございます。

    数少ない自然のままの沼のほとりにあったのですが(350m alt.),随分水の好きそうなものだと思いました。少々の水没も辞さずという感じで広がっていました。

    C. japonicum の方に先に出会うか,C. dendroides でも育ちの悪いものが最初だったらすんなり分かったかも知れません。ただ,迷ったから不運とは必ずしも言えないだろうと思っています。

    枝の数の多少・長さなどにも差異があるようですが,「多い・少ない,長い・短い」では初めての者にはあまり意味を持ちません。比較の対象がないのですから。せめて数量的な注釈があればと思います(細胞や葉長だけでなく)。

    一部の欧米の図鑑にあるように,すべて数値ずくめの表現というのも何が書いてあるやらイメージが浮かびませんが,それを使って初めて同定できた種もありました(イネ科)。
  • プロジェクトK

    プロジェクトK2007年08月06日 23:31 削除
    ごめんなさい。
    Pleuloziopsisとの差異でしたね。
    いかんいかんと文献を見直しました。
    私の中では全形と葉形ははっきりしている印象でしたが・・
    C. dendroidesはぱっと見ではう感じが印象に残っています。
    これはKEIZOさんの意見に一致するのでしょうか。
    それとC. dendoroidesの方がごっつい感じというのが印象です。
  • 丹後

    丹後2007年08月07日 08:30 削除
    》 プロジェクトK1号 さん

    Pleuloziopsis は茎のラメラ状の溝ですね。一生見る機会はなさそうですが。

    > C. dendoroidesの方がごっつい感じ
    意外でしたが,C. dendroides は枝が太く短いようですので何となく分かります。逆に言えば C. japonicus が伸びやかでスレンダーという・・・。

    いずれにしても,なれそめ・初体験というのは緊張感もあるし印象も強烈,2度目 3度目とは価値が違うなと思いました。

丹後

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