歩く範囲が隠岐(隠岐諸島)に限られているので,段々新しいものが無くなってきた。大量にあったり目立ったりして見付けやすいものは,大体採集し終ったのだろうか。これからがいよいよ正念場である。ボヤッと見ていたらいつまでたっても数が増えそうにない。
本種は,激しい雨の中で適当に持ち帰った集団の中に混じっていた。現地ではハマキゴケ Hyophila propagulifera かな?しかし場所が少し変だ,と思った記憶がある。何種かを確認した後本種のことは忘れて放置していた。捨てようとしたが,激しく巻縮しているものが混じっていたので調べてみる気になった。葉が細い管のように巻いて尖り,それが更に丸まって下方に曲がり込む。上から見るとすべすべツルツルしたような独特の質感がある。この縮れ方は絶対見たことがある!ツチノウエノコゴケ Weissia controversa や,コネジレゴケ Tortella japonica とそっくりだということを思い出した。
濡らしてみると葉は意外に大きくて幅が広い(±2.5×±0.6mm to 4.0×1.3mm)。きわどく見逃すところであった。ハマキゴケとは葉形もパピラの様子も異なっていた。下部が狭くなり中部付近で最大幅,葉先は漸尖するが,凸曲線で丸味があり広い鋭頭又は鈍頭に終る。これなら,葉形の絵合わせだけでも種の限定ができそうだと思った。何故かセンボンゴケ科であることは検鏡してすぐ確信した。分析的に知っていたわけではない。今までに観察した記憶から来る直感なんだろう。
初めての属なので切片を作った。茎には中心束が発達し,葉の中肋のステライドは背腹両側にある。中肋の腹面は葉身細胞と同じで,小さなパピラ(先の丸い粒々)がぎっしりあるが,背中は細長い細胞からなって平滑である。なお,葉を外すと(ポロポロとすぐこぼれ落ちる!)長い透明な 1細胞列からなる( 8個以上)「葉腋毛」らしきものも見える。
葉形に多少の変化はあるが,・中央部が最大幅,・葉先は広く尖る,・中肋は突出しない,という特徴は動かないので,同属の他の 2種ではないであろう。唯一気になるのは,葉身細胞の大きさが野口先生の MOSS FLORA( 4.5-6μm)より大きめで 6-8μm幅である点だが,場所により葉によって変化があるので,取りあえずはよしとする。図で見る限り別科のヤリカツギ Encalypta ciliata がよく似ている。どこが違うのかもよく分からないが(胞子体なし),あり得ない高山蘚なので気にかけないことにする。
せっかく新しく知った種なのに,情報が平凡社の図鑑の 2行と図, MOSS FLORA の 10数行(図付き)しかない。和名のムツコって何だろう・・・と書いたところで,WEBの Moss Flora of China で記載と図が見付かった。Type: Japan, Rikusen となっているので,和名は「陸奥・小」の意味かもしれない。
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かたばみや 照かたまりし 庭の隅 野萩
かたばみの 花の盛や 蟻の道 如此
かたばみを 見てゐる耳の うつくしさ 横山白虹
植物季語苦手意識が芽生えてきました
どうしたらいいのでしょうねえ
やはり植物に接する機会を増やすのが第一のように思います。花屋・庭・公園・植物園・田園・山野。市街地でも結構花は咲いているような気がします。目を留めるかどうかなんですが。デジカメで撮すのも良いかもしれません(自分のギャラリーを作る)。
人でもしょっちゅう会っていると情が湧いたりしますが,植物も同じです。好き嫌いの感情とはちょっと別ですが。
歳時記の植物季語の部を読破というのはどうでしょうか。「花の歳時記」などという写真の多いものも出ています。
春の植物は俳句に仕立てやすい(自分のなかで)なのですが
夏の植物は苦手かも。
合歓の花と向日葵ぐらいでしょうか。
もう少し増やしたいにゃあ。