南の方のもので,隠岐にあるはずがないような気もする。純然たる仮の同定であって確信はない。記載されている形質がすべてぴったりということではないが,さりとて決定的な食い違いもない。作業仮説というわけであるが,こういう難しい仲間ではそれもやむを得ないだろう。
人家近くの粘土質の崖に一面に広がっていて,オオホウキゴケ J. infusca とは少し違うような気がして採集してみた。検鏡したら確かに別のものであることが分かって少し元気が出たが,花被がついてないので検索表が使えない(雄株か?)。Jungermannia で花被がないのは致命的である。
本種と仮定したきっかけは,Family Jungermanniaceae of Japan (D. Amakawa 1959) に出ていた油体の写真一覧に似たものを見付けたことである。眼点が 2つあるのが特異である(無い場合,1個の場合もあって不定)。他には,葉身細胞に影のような縦の縞模様が見えることで(ごく薄いが明瞭),これはよい特徴かも知れない。また,茎が多肉質という記載もあるが,確かに φ 0.5mm以上と太めで,ジューシーな感じがする。知らないでちぎったら汁が飛び出してアレッと思った。
更に,トリゴンは小〜大,油体の数は2〜7で小さな球〜長い楕円体,と全く節操がないがこれも特徴の一つであろう。縦の縞も見えたり見えなかったりで,全体を見回してからでないと判断を誤ることになる。
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御配流(はいる)の 隠岐の遠さよ 都草 紀藤道女
みやこぐさの 名もこころゆく ねころびぬ 大野林火
都草(みやこぐさ) 屈めば揺れる ペンダント 寺田青香