キヌゴケ属の分類は難しいとされていたので，“Arikawa, T. (2004). A taxonomic study of the genus Pylaisia” が出版されたのは嬉しい限りである。実際今までは，普通種キヌゴケ P. brotheri すら「合ってるかどうか？」とスッキリしていなかった。
このコケは以前，「所属不明種」（07/1/6）として日記に書いたもので，長い間頭痛の種であった。必ずしもイヤな頭痛であったわけではない。人間，多少の“頭痛”はあった方がよいように思う。
その時，『キヌゴケ属 Pylaisiella 7種を，1つずつ検討してみたがいずれでもなかった。』と言っているが，間違えた原因は“内�飮�が外�飮�に付着（癒合）”の意味を誤解していたためである。本種に関しては，“内�飮�の上部（のみ）が付着する”と考えるのが正しい。下部は基礎膜とともに多少残っている。また，�櫃�“広卵形・卵形・長卵形・円筒形”という区分にもこだわっていたのだが，変化があるので慎重を期さなければいけなかった（採集品のは長細くてあまり膨らまない）。
読み直してみたら，『外�飮�は全面にパピラがあって（裏面も同様），中央の縦の条はない。内�飮�はパピラだらけの基礎膜（basal membrane）が輪のように残っていて，�飮�はすべて折れてなくなっているように見える。』，と書いている。実はこのことだけから P. nana であると確定できていた。知識がないということは辛いものである。外�飮�の裏面全体にパピラがあるのは，本種一種に限った特徴だそうである。
なお，上記有川氏の論文に“exostome teeth ... smooth below, ...”，となっているのが不思議でしょうがない。外�飮�の表面下部がパピラで覆われるのも本種の大きな特徴であるはずだが。
昨年 12月に既に�櫃瞭�が見えていたがやっと�飮�が完成した。6ヶ月かかったことになる。コケの胞子体の成長がこんなに時間のかかるものだとは思わなかった。そして，初夏に胞子体が成熟することも本種の特徴の一つのようである。確かに， P. brotheri には幼い胞子体が今できているが，成熟する（蓋が取れる）のは晩秋〜初冬である。
Higuchi, M. 1999. A reappraisal or Pylaisia nana という論文もあるようだ。自分一種だけで論文を書いてもらえてこのコケは幸せ者である。
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みどりの穂 こぼし初めたり 小判草 山田みづえ
小判草 ゆるるばかりで 音持たず 西尾颯子
小判草 小判まぶしき 庭薄暑 清崎敏郎
これで関東地方で新たに産地が追加です・・・