どうもスッキリしないので,また顕微鏡を覗いてみた。あまり厳密な観察ではないが,更に以下のような印象を得た。
(1) 葉に,下部の幅が広いもの(披針形)とそうでないの(線形)の二型があるが,線形または長楕円状線形の細長い葉は,枝の先端付近にのみついていて数が少ない。基本は披針形の葉で,明瞭にキールし下部が広く,葉縁が反曲する。線形のものはヒメミノゴケ M. gymnostomum の葉に似て平らでのっぺりしているが,こちらは多少とも皺が出る。
(2) 緑色をしたまだ新しい葉と成長して古くなった葉(黄褐色)とでは,葉身細胞の見え方が異なる。よって,これも二型。大きなパピラがあって葉面(上部)が暗く,細胞の輪郭が全く見えないのは新しい葉の方である。古い葉はパピラが目立たず(消えたよう)厚角・厚膜の細胞壁が明瞭に見える。
(3) (2)の点については,M. gymnostomum でもたまにそうなるがあるがあまり明瞭ではない。
胞子体がついていなかったために細かな観察をせざるを得なかった。難しすぎず易しすぎずというのが「よい問題」の条件である。胞子体がついていると「易しすぎ」たかも知れない。ただ,コケの問題は初心者にとっては「難しすぎ」ることが多い。コケ自体の持っている原因もあるが,説明不足・情報不足のせいもある。
---------------------------------
黒文字の 花はみどりの 四月かな 野瀬知佐
春昼や こぼるる花と ちる花と 小杉余子
春暁や 人こそ知らね 樹々の雨 日野草城
リュウキュウ→薄壁で方形でマミラ状
ヒメ→非常に厚壁で形がいびつで平滑
葉身細胞のパピラの有無や膜の厚さは,葉の成長段階によって変化します。場所(位置)によっても大きく異なります。
厚壁に見えるものが,よく見ると細い隙間があったりして,普通の意味の厚壁とは違うこともあります。
Noguchi図鑑のリュウキュウの解説にあるのは,その辺の事情のことかと思います(枝葉ですが)。
なお,浅井さんのブログにあるのは葉の形からヒメだと思いました。
ここまで書いたところで,本日付の【補足】に気付きました。「枝葉の2/3の位置」で測っているんでしょうか。境界が見えず測れないこともあるのですが。
茎葉(Stem leaf)というのも曖昧です。私は,主茎(一次茎)の葉が壊れている時は「太い枝の下半部」で十分と考えて来ました。
葉身細胞(Median laminal cell)の定義も日本の文献では見たことがありません。保育社や平凡社の図鑑のように,○をつけてあちこち測るのでは,図がないと計測値の表現ができないことになります。