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丹後の日記

ペリギニウム編集する
2007年04月02日08:15全体に公開
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先日のヒトスジツボミゴケ Jungermannia unispiris を調べていて,今まで曖昧であったペリギニウム(Perigynium)という語の意味がはっきりした(少なくともツボミゴケ属に関しては)。というか,ものがものだけに慎重を期して,そうならざるを得なかったいうのが実情。

この語は,雌花(Gynoecium)の特定の器官や,その固定的な部位を指しての名称ではなかった。雌花の”肥厚”(伸張)した部分はどこでもペリギニウムと呼び,場所が決まっているわけではない。

平凡社の図鑑のツボミゴケ属の図で,右端のオオホウキゴケが「ペリギニウムが著しく発達し,・・・」の例である。その左のナシガタソロイゴケが「ペリギニウムはほとんど発達せず,・・・」でこれが“基本型”。

右の図で見ると,大きな袋になった花被(Perianth)の途中の辺りから,(最内側の)雌苞葉(Perichaetial bract)が分岐して出ているように思われる。しかし実際は,分岐点から下は雌苞葉の下部が伸びだした部分(ペリギニウム)で,途中から出ているのは花被の方である。つまり,上にある花被と雌苞葉の下部とが合わさって袋状の壺を作っているわけである。

保育社の図鑑では,「花被は苞葉とゆ合する。」という表現になっており,こちらの方が簡明かも知れない。「ゆ合」部分がペリギニウムである。平凡社の図鑑では「・・・最内側の雌苞葉が造卵器よりも明らかに上につく。」となっていて,意味はよく分かるが前記のこととやや矛盾する。なお,“造卵器”は壺の底,朔(黒褐色の玉)のでき始める位置と考えてよい。

他に,胞子体を包むカリプトラ(Calyptra)という薄い膜ができるが(蘚類の帽に当たる),同定には関係しないようである。

要するに一言でいえば,「袋状の壺の外壁,どの高さから苞が出るか」の問題であった。やれやれ。


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 チュウリップ 影もつくらず 開きけり       長谷川かな女
 それぞれに うかぶ宙あり チューリップ     皆吉爽雨
 複雑に なるのが嫌で チューリップ       須川洋子


コメント

  • 退会したユーザー

    退会したユーザー2010年04月10日 20:13 削除
    私もこの日記を読んでやっとペリギニウムが分かりました。

    図鑑はこういう事をちゃんと分かりやすく初心者に説明して欲しいものです。
    「肥厚部分」とはなんだ?と思ってしまいます。
  • 丹後

    丹後2010年04月10日 21:05 削除
    コケ学者は「人に伝えて分かって貰いたい」と思ってないんでしょうか。つまり自分だけ分かっていればいい。アマチュアを育てる気もない。例外の人もいない訳ではないですけど。

    他の例で「苔類の雄花(造精器)」,説明らしきものを私は読んだことがありません。検索表や種の記載ではよく出て来るのですが。分かるまでに3年くらいかかったような気がします(笑)。あと,「葉身細胞」とはどの辺の部分なのか?とか。

    すみません。このところ厄介な仕事を頼まれており(パソコンアプリの設計),ちゃんとコメントする時間的余裕がありません。コケについての話は,どんな小さなことでも大歓迎なんですが。
  • 退会したユーザー

    退会したユーザー2010年04月10日 22:44 削除
    いえいえ、気になさらなくていいですよ。

丹後

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