ヤマトフタマタゴケ M. lindbergii は,「中肋部表皮細胞が 2(-3) 細胞幅,本種は 3-5 細胞幅」ということになっている。平凡社の図鑑にある「翼部の細胞の大きさ」の違いは確認できなかったが,“2(-3)” 対 “3-5”で機械的に分けられるような気もする。
しかし,日本産のこの 2 つが異なるものであるか,あるいは何であるか(学名)については今まで多くの見解があったようである。ヤマトフタマタゴケについてはかつて M. conjugata ssp. japonica (Hatt.) Kuwah. が使われていたが,その後本図鑑と同様にアジアに広く産する M. lindbergii と同一種とされた。
ところで,『日本産タイ類ツノゴケ類チェックリスト, 2004 (水谷・古木)』を見たら,エゾフタマタゴケが M. lindbergii(ヤマトフタマタゴケ)に含まれて消えてしまっていた。これは,So, M.L. (2003) による“M. conjugata をアジアから認めない”という最近の見解に基づいているのであろう。
なお,井上浩博士の隠岐での標本 5 点は全部 M. conjugata となっているが,これは「日本産の“2つのもの”はすべて M. conjugata である」という氏の見解である。
---------------------------------
犬ふぐり 大地目覚めて をりにけり 多田羅初美
ちりばめて 必死の花の 犬ふぐり 戸梶一花
膝ついて 膝より低き いぬふぐり 嶋田淑子