カヤゴケ R. inclinatum も含めて 10数個の標本を調べてみた。今まで両種の差は明瞭だと思っていたが,詳しく観察してかえってぼんやりしてきた。もちろん,典型的なものについては,ルーペだけで簡単に判断できるのだが。
両種とも変異が多く,特に葉の形や大きさは変りやすい。同一群落の中でも色々なものが混じっているので,全体を見ることが必要である。カヤゴケについては,薄暗い場所に細々と生きているものと,明るい場所ですくすく育ったものではまるで感じが異なることに気付いた。
両者の区別で,最も頼りになるのは“葉先の尖り方”だと思うのだが,これも似てきてどちらなのか迷うようなものが出て来る。そうなると,結局“細胞の大きさ”で判断するしかなくなるが,大小色々な細胞があって一定ではないので間違いやすい。
先日の,イセノテングゴケ R. ovalifolium,本気で信じてはいなかったのでもう一度丁寧に検鏡してみた。葉身細胞の長さが 120μmを越えるものが多く含まれているので,“コカヤゴケの変異内”のものという結論になった。
今回時間をかけて,コカヤゴケとカヤゴケについての認識は深まったと思うのだが,学者ではないのでこういうことで 2日も 3日も潰れるのはあまり有難くない。もっとも,明快な結果が得られていたらそうは思わなかったかも知れないが。
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折鶴の ごとくに葱の 凍てたるよ 加倉井秋を
凍てあがる 万象の冷え 葱をぬく 長迫貞女
夢の世に 葱を作りて 寂しさよ 永田耕衣