樹幹に着生して 3-5mmの枝が斜上,糸屑状にぎっしり固まる。外観は,イヌケゴケ Schwetschkopsis fabronia (別名:キノウエノホソゴケ)に驚くほど似ている。ただ,イヌケゴケは乾くと葉が枝に接して細い紐のようになるが,本種は葉先が開いたままであまり枝に接しない。また,顕微鏡下ではまるで異なる。
1年前に採集したものだが,アオギヌゴケ属に迷い込んで行き詰り(小型種),放置してあった。今回コゴメゴケ科の可能性を思い付いたら,割とスムーズに種を特定できた。胞子体があればもっと簡単明瞭だったのだが,探しまわって却って知識が増えたことを良しとしよう。
ただ,朔が無いためにコンテリケゴケ Helicodontium doii なる種との区別が厄介である。記載を比べても大きな差がない。最終的には,"Illustrated Moss Flora of Japan (Noguchi)" の図版で判断した。キノウエノケゴケは葉先がもっと細く長く尖る。それに,コンテリケゴケの方はずっと稀産種でもある。
付記: 本種の中肋は弱いが,コンテリケゴケは強壮でより長い。
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木の姿 枝のかたちに 冬日満つ 増田國久
桐の木に ありし冬日の 失せにけり 加倉井秋を
冬の日の 刈田のはてに 暮れんとす 正岡子規