取り敢ずタマキチリメンゴケ H. dieckii としていたもの。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1467743291&owner_id=2651499
誤った原因はオオベニハイゴケについての不正確な固定観念にある。今までは比較的乾いた環境での(いずれ水の近くだが)採集が多く,湿地性のものに対する把握が不十分だった。イメージが偏っていたと思う。上記の日記でもオオベニハイゴケは全く眼中になく,エゾハイゴケの方を余計気にしている。今回は再確認の意味で,1地点のみでなくそこら辺り数ヶ所から(多少とも違って見える場所),色々採集して来た。そうして,オオベニハイゴケの可能性がやっと頭に浮んだ。
決定的な分れ目は,検索表での「茎の表皮細胞の分化」の解釈にあった。タマキチリメンゴケは「大形・透明で
よく 分化し,外側の膜は薄い」少数派グループに入る。この“よく”を軽視していたことになる。一目で迷う余地のないくらい「大形・薄壁」でなければならない。
逆に,透明表皮が「分化しない」グループには(オオベニハイゴケはこちら),以下のような微妙な言葉遣いがしてある。
「分化せず,外側の壁は
普通 厚い」 :平凡社図鑑
「小さくて,全く
またはあまり 分化せず,外側の膜は厚いか,
やや薄い 」 : H. Ando
「Not or
imperceptibily differentiated , small and
more or less thick-walled」 : A. Noguchi
胞子体付の確実なオオベニハイゴケも調べてみたが,まさにこのようになっている。表面の1層は“やや大きくなり,多少とも外側の膜が薄い”が顕著ではない。また,全周ではなく,そうでない部分が一部に交じる。そのような種も(例えばクチキハイゴケ P. densirameum)あることは知っていたが,オオベニハイゴケがそうなるとは知らなかった。
湿岩上の本種は,ややエゾハイゴケ的な外観に近づくことを知った。(1) 葉が幅広く卵状に近づき,(2) 葉先は広く尖りあまり鋭くなく,(3) しばしば縦皺が見られ,(4) 鎌曲りも顕著ではない,(5) 葉質はかなり厚ぼったい。もっとも,翼部を見ればエゾハイゴケとの区別は直ぐできる。
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梅雨の海 静かに岩を ぬらしけり 前田普羅
森といふ 梅雨の塊(かたまり) ありにけり 岩垣子鹿
青梅雨の 深みにはまる 思ひかな 石川桂郎
こういう場合は、どれもハイゴケにしてしまいますね・・・
湿地のハイゴケは翼細胞が大きくなりがちです。