非常に特徴の強い苔なので(フクロヤバネゴケとケシゲリゴケが思い浮んだ),直ぐに分るだろうと思ったが意外に時間がかかった。保育社図鑑の図版がちょっと極端で「科」に困った。こんなにすごくはない。これは大きく生長した場合の,茎の部分だと思う。平凡社の図鑑の枝の写真が非常に感じが出ている。ただし常に茶色を帯びるとは限らない。「時に赤褐色を帯びる」程度の表現がよい。「腹葉のへりに長いシリアが常にある」わけでもない。
苔類としては珍しく(?),2回羽状にきちんと分枝するのも印象的だった。葉の裂片が裏へ巻込んで作る,袋状の付属物も頭に焼付いた。これはまるで「腹片」に見える。球状(φ3-4μ)の油体が10〜30個浮んでいるのも目についたが,新鮮な若い葉では紡錘体〜楕円体で,こちらが本来の姿だと気付いた。文献によって,基物の記述が色々だが「腐木や湿岩」を採用しておきたい。
低地の渓岸の岩上に,径数cmの小さな丸い斑点を作っていた。ここはエゾハイゴケの群生地で時々覗いていたが,今まで全く気付かなかった。踏んで歩いていたと思う。広い山野に数ヶ所しかない(まさか1ヶ所ではあるまい),小さな「斑点」を見つけるのは容易なことではない。ただ,1度知ると小さな群落でも次々に見つかることはよくある。脳が学習するに違いない。
近畿地方産の標本の標高をチェックしてみたが「低地にも出るが高地により多い」もののようである。また,東亜固有の特異な属で,どの科入れるかは色々説があるという。
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咲く頃と 思へば合歓の 咲いてをり 今瀬剛一
長睫毛 ぬらして雨後の 合歓の花 室伏文恵
ゆつくりと 行かうと思ふ 合歓の花 松本秀一