「ゼニゴケ M. polymorpha とともに“ごく普通”なもの」だというが,やっと見つけた。隠岐では“ごく稀”であるに違いない。「『隠岐諸島産苔類のフロラで気付く最も特異な点は,対馬の場合と同じ, Marchantia 属の完全な欠如である(ただし,対馬には M. paleacea ssp. diptea が産す)。・・・』という報告がある(1985 井上浩)。
ゼニゴケについてはその後5ヶ所で見ているが決して普通ではない。近年になって国内帰化的に入ってきたものであろう(無性芽により)。昔からあったものならもっと広がっていてよさそうなものだ。顕花植物の帰化種も,対岸の島根半島とは優に10年以上の時差が生じる。
図や写真で名前が分かってしまう有り難いコケの一つである。ただ,雌器床が二叉状(二羽)になるのが大きな特徴と思っていたのだが,これは“不稔”の時の性質だという。確かによく見ると裂片(短く丸まった)の素(もと)がちゃんとある。そして,胞子体が付く(稔る)場合にはすべての裂片が放射状に発達するらしい。そうなるとトサノゼニゴケM. emarginata ssp. tosana に似てくるが,こちらは葉状体の幅が3-4mmと小さいので分かるであろう。
低山地の林道,渓流沿いの石垣に,圧倒されるような大群落を作っていた。雌器床の上面が白っぽい色で非常によく目立った。これでもか!というほど雌器托が立ち並んでいたが,全部2又で“稔った”ものはなかった。また,雌株ばかりなのであろう,傘状の雄器托も見えなかった。僅かに無性芽器(杯状)をつけたものがあって,“つづみ型”の無性芽を確認できた。これはこの属の著しい特徴であるという。
今後は,「雌器托がない時でも採集できるか?」が問題となる。手に取ってしまえば,「腹鱗片の付属体が円形でほぼ全縁」を確かめれば良いのだが。というより,「腹鱗片が濃い紫褐色のものは全部採集(ゼニゴケは半透明)」が良いかもしれない。
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おのづから 心に折目 若楓(わかかえで) 後藤比奈夫
さびしさも 透きとほりけり 若楓 永島靖子
楓若葉 この明るさは 未婚のもの 大井雅人
○フタバネゼニゴケ
です。一瞬珍種かとびっくりしました。東京では秋山先生の「苔の話」の通り、ゼニゴケより非常に多いです。しばしば人家近くで大きな群落を作ります。
また,文献上の知識ですが「“人家近く”にはない」と思っていました。
数十年にわたって多くの府県を調査した結果ですので(標本30,000点),簡単に否定はできません。ただ,「正しさ」は“地域”によりあるいは“時代”によって変化するのかもしれません。
苔類の基本文献の一つと思います。古書店に時々出ています。
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ただ,地域が近畿なのと多少高価という点で,推奨度は65%です(笑)。