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丹後の日記

ニセホソバトジクチゴケ Weissia newcomeri編集する
2010年05月22日16:07全体に公開
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少し小さ過ぎるような気がして覗いてみたら,全く〔朔〕歯がない。幸い“〔朔〕歯の有無が問題”という知識はあったので持ち帰る気になった。ツチノウエノコゴケ W. controversa の方の〔朔〕歯は,退化中の貧弱なものではあるが,ルーペでもはっきりと確認ができる。

本当にないのかどうか,落ちたり隠れたりしている可能性はないか,初めてのことなので丁寧に調べてみた。帽が取れたばかりの胞子が満杯の壺も口部はツルツル。帽にさわって無理に外してみても〔朔〕歯らしきものは現れない。一方ツチノウエノコゴケは今の時期でも全部に〔朔〕歯がついていた。間違いないだろうと思う。

〔朔〕歯なしの種が3つあるが,クロジクトジクチゴケ W. atrocaulis は黒軸で本属としては巨大,しかも超稀産種なので無視。もう一つのホソバトジクチゴケ W. edentula との区別は相当難しい。最初は,アジアの広分種でより無難なこちらの方だと思い込んでいたのだが,明らかに違うという結果になった。理由を以下に挙げる。

(1) 葉縁の内曲が極めて狭く,範囲も長くても上部1/2を多少越える程度。
(2) 狭披針形の葉は少なく(to 下方で0.6mm幅),葉先はやや鈍形で中肋の微突起が顕著である。
(3) 蓋に長い嘴があって,蓋の全長0.6-0.8mm。W. edentula は0.4-0.5mm となっていてかなりの差である。
(4) 胞子放出後でも,丸味のある(円筒形ではない)〔朔〕が多く交じっている。

A. Noguchi (1988) : This species is distinguished from other eperistomate species of Weissia by its wider leaves and longer operculum-beak. という文を読んだのが宗旨替えのきっかけである。危うく安易な結論で済ませるところだった。

採集品は隣の島の墓地,乾いた低いブロック壁についていた。そして比較のために新鮮なW. controversa をと,自宅横の墓地(数mの距離)の土上から採ってきたものも本種だった。しかもこちらの方が特徴がより明瞭。以前から「小さいな〜」とは思っていたのだが・・・。今後,厳しい環境で小さ過ぎるWeissia に出会ったら,〔朔〕歯の有無を確かめた方がよい。

“トジクチゴケ”という相応しくない和名は,かつてのトジクチゴケ類を含む別属Hymenostomum に入っていた時の名残であろう。


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銀蘭や 根元清(すが)しき 雑木山      蓮見淳夫
銀蘭や 汝(なれ)も黙(もだ)せる 明るさに   花谷和子
かはたれに 素足の白さ 銀蘭に        神長津岐恵

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