昨日の(マキバサワゴケ P. revoluta 型の)コツクシサワゴケ P. thwaitesii 騒動で,かつて本種と同定した標本も見直してみた。
http://mixi.jp/list_diary.pl?phrase=Philonotis+mollis&search=body&id=2651499&submit=search
しかし,共通点は「中肋が針状に長く伸び出す」という点だけで,(1) 葉縁が平坦で,(2) 乾いても葉が開いたまま,という2つが P. revoluta とは決定的に異なっていた。ということは,これはやはり(日本の文献に基づくと) P. mollis とせざるを得ない。しかし,本当にこれでいいのか自信がなくなって来た。
前回に触れた A. Eddy の図鑑に,本種の著しい特徴として “interior basal cells strongly enlarged, thin-walled ..., up to 20 μm wide and up to 100 μm” となっている。この文の“20 μm wide” を見落としていたことに気付いたからである。さすがにここまで幅広くはない。
しかし,A. Noguchi : Illustrated Moss Flora や 図鑑 Moss Flora of China ではそんなにふくれあがるとは書いてない。同じ東南アジアのバングラデシュの論文を見ても同様である。だけど,それぞれに書いてあることが少しずつ違う。どれを信じてよいのやら。自分なりの最終結論を出すのは,もう少し先に延ばすことにする。
ひょっとしたら,これはオオサワゴケ P. turneriana の一型ではないかという気もしてきた。「葉が細く薄っぺらで,乾くとよれよれになって開いたまま(茎に接しない)」とい印象がよく似ている。そうだとしたら,長い芒が問題だ。確かに“Moss Flora of China” でも日本の図鑑同様「中肋は短く突出」としているが,件の東南アジアのもの2つでは,長く芒状に伸び出すことになっている。いずれの文献も精密な図版付き。どちらが本当なのか?芒が出るので日本の検索表から漏れるのだが,「あまり採集されたことのない型」ということも考えられる。
しかも,A. Eddy は 「A. Noguchi (1989)の図版は,芒が出ないのと雄苞葉が狭い点が Mitten のタイプ標本と異なるので,P. turneriana のものではなかろう」と言っている。そう言えば,外国の文献は3つともオオサワゴケでよく見かける無性芽への言及がない。オオサワゴケは「 P. turneriana の日本特有(芒が出ない・無性芽をよくつける)の変異型」という可能性もありそうだ。
---------------------------------
ほんのりと 日のあたりたる 柳哉 野坡
人生を 空費して居る 柳かな 永田耕衣
卒然と 風湧き出でし 柳かな 松本たかし