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丹後の日記

マキバサワゴケ Philonotis revoluta編集する
2010年05月19日13:12全体に公開
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前に,苦しんだ結果コツクシサワゴケ P. thwaitesii とした標本があったが,その時に「それにしても,今まで日本でマキバサワゴケ P. revoluta と同定されていたコケは,何処へ行ったんだろうか。」と書いていた。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=597308790&owner_id=2651499

今回,別の場所で同じものを採集したが「これこそ今まで日本で P. revoluta として認識されて来たものだろう」と気付いた。例えば,保育社図鑑(1972)・A. Noguchi (1989)・山口県のコケとシダ(塩見隆行 1982)・三重県の蘚類(孫福正 1979)。特徴は,(1) 大形で固い感じ,(2) 葉縁が強く反曲,(3) 中肋は長く伸び出して芒状の針になる,等。

この種は新しい文献には出て来ない(例えば平凡社の図鑑)。
Z. Iwatsuki (2004) によると,P. revoluta = P. nitida ⇒ P. nitida = P. turneriana となっている。これだと,P. revoluta は オオサワゴケ P. turneriana の異名ということになる。

しかし,どう考えてもこのものをオオサワゴケとすることができない。第一,最も重要なオオサワゴケの特徴と思われる「葉縁が平坦」とはっきり矛盾する。また,乾いても葉が真っ直ぐで茎に圧着するのも違和感がある。オオサワゴケはよれよれになって開いたままのことが普通だ。

ウェブ上の Missouri Botanical Garden - TROPICOS で採用されているのは,
Philonotis revoluta Bosch & Sande Lac. (1861)
= Philonotis thwaitesii Mitt.
fide Koponen, T. & D. H. Norris 1996
fide Kopone, T. 1998

中国人の著者による,「Moss Flora of China (2007)」も同じ扱いになっている。Koponen 博士に従いたい。

ただ,マキバサワゴケは日本で P. nitida を当てたこともあり,それだと以下のようになる。
P. nitida Mitt. (1859)
= Philonotis turneriana (Schwaegr.) Mitt. (1859)
fide Kopone, T. 1998

しかし,P. nitida = P. revoluta とする学者もいて(A. Eddy 1996),ことはそう簡単ではない。P. nitida は何か別のものだとして,前記 Z. Iwatsuki (2004) 共々無視する。つまり,かつてマキバサワゴケであったものをコツクシサワゴケに含めて終りにしたい。


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 我心 或時軽し 罌粟の花           高濱虚子
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 恋ひ来たる アンダルシアの 雛罌粟(アマポーラ)  文挟夫佐恵


コメント

  • 退会したユーザー

    退会したユーザー2010年05月19日 17:39 削除
    分子系統樹の解析でオオサワゴケと一緒になったのではないでしょうか。分子系統樹はしばしば形態分類と矛盾するものです。
  • 丹後

    丹後2010年05月19日 18:47 削除
    P.revoluta = P.nitida のところが問題のようです。

    Z.Iwatsuki(2004)だと,fide Gangulee (1974)となっており時代が違います。それに,これに従うと平凡社図鑑の検索表が即破綻します。

    A.Eddy(1996)の図鑑では詳しい形質の分析を行っていますが,P.revolutaについては単に異名として挙げてあるだけです。DNA解析をしたような兆候はありません。

    分枝系統樹は一つの説であり,直ぐに図鑑の分類を変えるというようなことはないように思います。また,それが重要な結果であれば同時代の学者は全員知っているはずです。

    想像なんですが,学者によって見解が異なるのは見ている標本が違っている為ではないでしょうか。タイプ標本に当たっていない場合もあります。例えば,日本の学者ならどうしても日本産の標本(型)に基づいて考えがちです。
  • 退会したユーザー

    退会したユーザー2010年05月19日 20:12 削除
    それと、標本が古くなると劣化して葉の巻き具合が失われるのかもしれません。

    秋山先生は「苔の話」で「分類学的再検討を行う場合は世界から標本を集めて膨大な数を検討しなければならない。」と書いています。だから、見ている標本が違うという事は基本的に無いでしょう。
    しかし、分類学の論文審査で世界中の全標本にもとづいたか確かめていないかもしれません。

丹後

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