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丹後の日記

ジムカデゴケ Didymodon rigidicaulis編集する
2010年05月10日11:57全体に公開
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ギンゴケモドキ Anomobryum filiforme var. concinnatum の標本を掃除していたら,高さ5mm前後の欠けらのようなのが10数本混じっていた。標本の量がたっぷりあったのと,湿った状態で本種の特徴が出やすかったのが幸いした。乾いていたら見逃していたに違いない。昨年あたりから,こういう「掃除中にとんでもないものの混生」が見つかるというパターンが続いている。今回も,単独では絶対に採集できないような量と小ささである。

名前は知っていたが隠岐にあるとは全く思っていなかった。平凡社の図鑑では「亜高山帯の開けた,乾燥した石灰岩露頭に多い。」となっている。これはよいとしても「〔分布〕本州(中部以北);・・・」の部分は間違いであろう。中国地方でも採集例は珍しくない(石灰岩地帯)。本品の採集場所は林道の切取崖(260m alt.)だったが,薄くコンクリートを吹き付けた痕跡が残っていた。コケにとってはコンクリートでも石灰岩でも同じことなんだろう。

標本が小さすぎるし量もないので,センボンゴケ科では必須の葉や茎の切片を作っていない。葉腋毛の観察も省略した。ものぐさもあるが,種の特徴が強くて同定に何の不安もないからである。多少とも似ていると思われるのは,ノコギリフタゴゴケ D. eroso-denticulatus であるが,大型で葉身上半部には鋸歯があること,葉身細胞のパピラが0-2個と少ない点で異なる。

以下の点を確認すれば本種と断定してよいと思われる(日本では)。
(1) 小型で茎はせいぜい2.0cm,葉の長さは2mmまで。
(2) 葉はまばらにつくことが多く,乾いてやや茎に接し,湿ると思い切り背中に反り返る。これは非常に目立つ特徴で,今回もこのお蔭で「これは何だ!」と気付いた。葉がこれほど後ろへ曲がるセンボンゴケ科の種はなさそうだ。
(3) 葉身細胞は,明瞭な厚壁かつ厚角でごつごつした印象がある。形は角の丸い短矩形〜ダイヤモンド状。細胞腔上に3-5個の先の丸いパピラがはっきり見え(表裏両面),かつ葉身は明るい。
(4) 葉は中肋に沿って強くキールし,葉縁下半部は反曲する。葉縁に鋸歯はない。
他にも,葉がやや3列につき茎は多少とも三角形,翼部が茎上に長く下延,成長すると赤褐色を帯びるなどの特徴があるようだ。本標本も濃紫褐色で緑の部分は極少なかった。


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 日輪の 燃ゆる音ある 蕨かな         大峯あきら
 ジーンズの 腰まろやかに 蕨折る       安藤弘一
 月日過ぐ 蕨も長(た)けし こと思へば    山口誓子


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