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丹後の日記

ハイヒバゴケ Hypnum cupressiforme編集する
2010年02月06日16:49全体に公開
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「もう野外でも大丈夫」と思っていたのだが,今回は間違えた。やや変わったハイゴケ H. plumaeforme の積りで採集。本種は今まで7回採集しているが,それらとは少し感じが違う。典型的なものとのズレを,点検してみることにする。‘⇒’の後が今回の採集品。

<異なる点>
(1) 葉は弱く鎌曲り,ゆるくカーブする程度。
 ⇒ 強く曲がり込んで(90°以上)釣り針状。
  ※ これにだまされた。あまり曲がらないのが本種の特徴なので意外に思う。
(2) くすんだ緑で,灰白色・黄褐色・紫褐色を帯びやすい。
 ⇒ 澄んだ鮮やかな緑。半日陰で湿度が高いためか?
(3) 葉は明瞭に凹み,茎に沿って鋭角に出,重なりあってつく。硬くしまった感じ。
 ⇒ ほとんど凹まず,茎に直角に開出。柔らかくふんわりとした印象。
(4) 葉のついた枝は丸みがありやや紐状,枝先は細く尖って見える。
 ⇒ 枝に丸みはなく広い,枝先は下に小さくうなだれる。

<一致する点>
(1) 翼部の境界は明かで,矩形・厚膜・不透明な細胞からなる。縁に沿って6-15個の横長の矩形〜方形の細胞が並ぶ。
  ※ これが本種の決定的な特徴。最終的にはこれを使って同定した。こんなものは他にないと思ってよい。ハイヒバゴケモドキ H. vaucheri があるが,高山の石灰岩上に生える稀産種。
(2) 葉の下半部が反曲して,その曲がり目の線が条(すじ)になって見える。
  ※ 今回気付いた面白い特徴。反曲と言っても‘裏へ曲り込む’わけではなく,凹んだ葉面が縁に沿っては‘平面になる’という意。つまり,縁を残して内部が凹む。
(3) ピンセットで挟んでしごくと,葉がツルッときれいに剥がれる。
  ※ ナガハシゴケ科の種ほど取れ易くはないが,ハイゴケ属の中では異例ではないかと思う。

北向きの湿度の高い墓地(石塔の土台石)に,分厚い純群落が広がっていた。今まで出会った中では最大規模のもので,それも勘違いの一因になった。今までは,陽当たりのよい乾き気味の岩上(樹幹基部)で,小さな群落しか見たことがなかった。

なお,隠岐で人家のすぐ近くまで出て来るハイゴケ属は,本種と ハイゴケ H. plumaeforme の2つのみ。人里(市街地+農耕地)から少し離れて(2〜300m)山へ入ると,ヒメハイゴケ H. oldhamii とオオベニハイゴケ H. sakuraii がある。隠岐の低地の Hypnum はこの4種に限られる。


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 しやがむとき 女やさしき 冬菫        上田五千石
 声にせば 失ふ如し 冬すみれ        中村汀女
 仮の世の ほかに世のなし 冬菫       倉橋羊村



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