そんなに珍しいものではないはずなのに(少なくとも西日本では),今まで一ヶ所でしか見てないのは不思議だと思っていた。「低地の新しい崖にパイオニアとしてあらわれることが多い。冬には赤くなり,枝の先にこの属としては無性芽をつけるのでよく目立つが他の季節ではよくわかりにくい。(児玉務 1971)」。なるほどそういうことか。確かに,小さいものが土の上に薄く貼り付いているだけで,何かがあるようには見えない。採集適期は赤変する 11月下旬以降ということになる。
似たような環境で赤く色づくものに,アカウロコゴケ Nardia assamica やオオホウキゴケ J. infusca があるが,本種は無性芽をつけるので間違える心配がない。無性芽をつける Jungermannia は特異で,他にはツツソロイゴケ J. subulata があるのみ。ツツソロイゴケも特殊な孤立した種で,花被があれば一目でわかる。また,決して裸出した土の上には生えない(ほぼ腐木専門!)。
無性芽は葉の縁にもできるが,鞭枝状になった茎の先端により多くつく。15-20μの透明感のある球で 1細胞性,内部に小球が不規則に散らばる。ローズピンク(?)を帯びて非常に奇麗だ。「油体は無い」が,ごく稀に 1-2個の紡錘体のが浮かぶこともある。葉身細胞では葉緑粒が壁に沿って一列に並び,内部が広く透けているのが印象的だった(安定した性質かどうか不明)。
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いささかな 草も枯れけり 石の間(あい) 召波
あめつちの やすむすがたに 草の枯れ 永尾宗斤
わが肌の ほとほとぬくし 草枯るる 原コウ子