小さ過ぎて何がどうなっているのか分からない。笑ってしまうほど小さい。検索表(平凡社図鑑)をたどるためには,腹葉を確認する必要があるがそれもできなかった。「何時間でも粘ります」という覚悟がないと駄目そうである。
茎の長さは ±1.5mm,葉の長さは大きそうなのでも 0.2mmほど。まさに micro(小さい)phylla(葉)である。こんなに小さな苔は初めて見た。スギゴケ科ハミズゴケ Pogonatum spinulosum の原糸体の上に混生していた。そのことを知っていなければ,何年経っても採集もできなかったかもしれない。第一眼に見えない。ルーペでかろうじて「何やらある」と思う程度。ウニヤバネゴケ C. spinicaulis も小さいのだが,密な塊を作るので肉眼でも「そこに何かが有るようだ」と気付く。
まず,茎の表面が平滑なので,ウニヤバネゴケではない。
(1) 「B. 腹葉は大きくて顕著。」とした場合。
八ヶ岳特産のキレハヤバネゴケ C. massalongii ではあり得ない。
既知種のオソレヤマヤバネゴケ C. divaricata は遥かに大きく(長さ5mm以上)て密生して,葉の裏面の多細胞性の突起が顕著。本品は低くて数も少ない。
(2) 「B. 複葉はないか,痕跡的で最大 10細胞からなる。」とした場合。
葉縁の鋸歯が目立つのでトゲヤバネゴケ C. acanthophora かと思ったが,雌花が必ず短枝に着くというので違う。オオミネヤバネゴケ C. kiaeri は葉が長さ 0.1mmで小さすぎる。
残りの種はすべて,分布が限られていたり亜高山帯以上のものであったり,はっきり違うようだ。
なお,本種の特徴に「葉身細胞が厚壁」というのがある。確かに厚壁だが「著しく厚壁(平凡社図鑑)」ではなかった。
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生き恥を もはやおそれず 木守柿 檜 紀代
選ばれし もののさびしさ 木守柿 岩崎慶子
廃村や 柿のすべてが 木守柿 渡辺真智子
普通はコバノヤバネかウニヤバネのどちらかだと思っていましたので。
東京でもコバノヤバネゴケは生えていました。採集地の地面は緑色でしたが、残念ながらハミズゴケの胞子体はありませんでした。
その通りのようです(保育社図鑑)。トゲヤバネゴケは,葉縁の鋸歯が目立つのでひょっとしたらと思っただけです。
>採集地の地面は緑色でしたが
すごいですね。「粗なマット」ですので「単独で生えているときは目につきにくい。」ということです。ハミズゴケの原糸体上では今まで 3度見ています。「必ず」ということではないでしょうが,「大抵・しばしば」だと思っています。
“日本産苔類図鑑(井上浩 築地書館)」”に本種の図がありますが,細胞壁が著しい厚壁である点が気に入りません。変異の多い種なんでしょうか。