平凡社図鑑の検索表が使い易い。「E. 舷は葉の腹翼，背翼，上翼のすべてにある（部分的に弱い場所もある）。」のグループに含まれる。そして，以下の 3点は問題がない。
(1) F. 〔朔〕は曲らず，直立して相称。
(2) G. 造卵器は常に頂生，雌苞葉は他の茎葉と同大またはずっと大きい。
(3) H. 「琉球」ではない。
次の「I. 〔朔〕をつけた茎は不稔の茎としばしば形や大きさが異なる。・・・」の箇所が，標本が不十分で 100%ではない。〔朔〕をつけた茎が小さく，葉が 2-4対であるのは確かだが，あまり大きな不稔の茎が見つからない。この条件を満たしていると仮定すれば，「J. 不稔の茎の葉の舷は非常に弱いか欠く。」ので本種に行き着いて同定は終る。
念のために上の条件 I. を否定してみると，エゾホウオウゴケ（広義） F. bryoides かジョウレンホウオウゴケ F. geppii ということになる。しかし，『水中または水しぶきのかかる岩上』ではないし，『上翼の舷が非常に強い（2-3細胞層）』でもないので，ジョウレンホウオウゴケではあり得ない。よって，エゾホウオウゴケの 5変種の 1つであるとしてよい。
× フクレホウゴウゴケ var. schmidii ・・・ 日本では石灰岩地特有のものだし，胞子体も未知だというので，無視してよい。
× ツクシホウオウゴケ var. lateralis ・・・ 何度か採集しているが，もう少し大きくて�殃舛和�生する。雌苞葉ははっきり小さい。
× エゾホウオウゴケ var. bryoides ・・・ これも既知の種だが，舷が強くしばしば葉頂で中肋と合流する。
× ホソベリホウオウゴケ var. ramossisimus ・・・ 実は，葉頂の中肋と舷の様子を観察して，他の可能性としては var. romossisimus しかなさそうだと思っていた。中肋は数細胞下で完全に消えて葉頂が平坦になり，舷ははるか下で完全になくなっている。こんな風になる種は，今考えているグループ中他には存在しない。「多少とも舷があって小形」という，見かけの似たもの達の中でさえも該当種がないように思う。
ホソベリホウオウゴケ も舷は弱いが，本種ほどではない。最も顕著な違いは，不稔の茎でしばしば舷が「完全に」消失することで，代りに葉縁に微細で不規則なザラツキが感じられる。また，舷があっても背翼では非常に弱く 1細胞列だったり，一部にしか現れなかったりする。〔朔〕のついた茎でもしばしば下部の葉では舷が消失することがある。このような舷の分化の甚だしい不規則性が，本種の大きな特徴なのだと思う。
var. esquirolii と var. ramossisimus はごく近い種と言われている。2つをセットにして記憶することにしよう。
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石榴裂け 海光のいま 濃かりけり 小松進一
肉感に 浸りひたるや 熟れ石榴 鈴木しづ子
青空は まじめで困る 石榴の実 寺田良治
